正社員の採用予定、6年ぶりに6割を下回る

人手不足が深刻化するなか、2019年の有効求人倍率は1.60倍と、依然として高度経済成長期に近い高水準が続いている(厚生労働省)。また、新規学卒者の就職内定率は2019年12月時点で87.1%(大卒)となり、1996年に調査を開始して以来2番目に高い内定状況となっている(厚生労働省・文部科学省)。さらに、政府は、就職氷河期世代に対して就労やキャリアアップなどの活躍支援を始めるなど、雇用の下支えが注目されている。

そこで、帝国データバンクは、2020年度の雇用動向に関する企業の意識について調査を実施した。

正社員の雇用動向 正社員採用予定は59.2%、非正社員は44.2%でともに2年連続の減少に

2020年度(2020年4月~2021年3月入社)の正社員の採用状況について、「採用予定がある」企業は前回調査(2019年2月実施)から5.0ポイント減の59.2%となり、2年連続で減少した。2014年度調査(2014年2月実施)以来6年ぶりに6割を下回った。他方、「採用予定はない」は同3.4ポイント増の27.8%となり、2年連続で増加した。

採用予定のある企業からは、「社員の平均年齢が年々上がるため、若年層の採用に力を入れている」(一般貨物自動車運送)といった、従業員の高齢化にともない採用活動を行うという意見が多く聞かれた。採用予定のない企業からは、「先行きの見通しが良くないため、人件費を補えるかが予測できない」(塗料卸売)といった、景況感の悪化による先行きの不透明感をあげる企業が多くみられた。

また、2020年度の非正社員の採用状況では、「採用予定がある」企業は44.2%となった。前回調査から6.1ポイントの大幅減となり、3年ぶりに5割を下回った。一方で、人手不足が顕著な「飲食店」、「各種商品小売」、「教育サービス」など、非正社員が人手不足にある業種の採用意欲は高水準となった。企業からは、「正社員を確保できないため、高齢者や学生のパ-ト・アルバイトにシフトしている」(ガソリンスタンド)など、正社員の雇用環境の厳しさによって非正社員の採用を考えている声が多数あげられている。

新型コロナウイルス感染症の影響で採用を控える企業も

企業からの声では、新型コロナウイルス感染症によって採用を躊躇するという声も多くみられた。「新型コロナウイルスの影響がなくなるまでは静観する」(情報処理サービス)や「コロナウイルスの関係で観光客数の回復が困難な状況であるうえ、オリンピック前後の動向も読めないため採用の予定はない」(旅館)という声があげられている。

「就職氷河期世代活躍支援プログラム」の利用状況 就職氷河期世代の活躍支援プログラム、6.3%が利用に『積極的』

政府は雇用の下支えを目的として、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った就職氷河期世代を対象に就労やキャリアアップの支援を行っている。「就職氷河期世代活躍支援プログラム」の利用状況について、プログラムの利用に『積極的』とした企業は6.3%だった。他方、「利用しない(できない)」は35.4%、「プログラムを知らない」は23.9%となり、4社に1社が当プログラムを把握していなかった。

企業からは、「人手不足が恒常的であり、支援プログラムがあるのはありがたい」(一般機械修理)といった前向きな声が聞かれた。その一方、「プログラムを知らない」とした企業からは、「知らない制度であったが、調べて自社の条件が合えば利用してみたい」(土木建築サービス)など、制度自体を知らないために利用していないという声もあがっていた。先行きの不透明感で企業の雇用動向は慎重な姿勢も

2020年度の雇用動向について、正社員の「採用予定がある」企業の割合は6年ぶりに6割を下回った。非正社員は、「採用予定がある」企業が3年ぶりに5割を下回ったものの、人手不足感が強い業種における採用意欲は依然として高水準を保つ結果となっている。

新型コロナウイルス感染症によって足元の景況感が悪化するなか、先行き不透明感の高まりにともない、既に採用に慎重な姿勢をとっている企業もみられた。今後の動向によっては採用計画を見直す企業が増える可能性もあるだろう。

調査概要
調査対象企業:2万3668社
有効回答企業:1万704社(回答率45.2%)
調査期間:2020年2月14日~29日
調査方法:インターネット調査

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