【新型肺炎で阿鼻叫喚 中国ホントの実態】#2
中国のSNSではさまざまな動画、画像、コメントが発信されている。2003年のSARS禍と明らかに違うのは、現場の「見たまま聞いたまま」が瞬時に拡散される点だ。中国の医療現場は阿鼻叫喚の生き地獄にある。
春節前の大晦日に当たる1月24日、病棟で治療に当たる医師が、電話に向かってヒステリックにわめき散らしている。語調は強いが、まるで言葉になっていない。辛うじて聞き取れるのは「家に帰してくれ! もうやってられない!」。
電話の相手は上司に当たる人物か。不休不眠の勤務続きで、精神錯乱に陥る医師を同僚が動画に収めたようだ。
同25日、こんなコメントが拡散される。「シャーッという音がしたと思ったら、患者の家族が医師の防護服を引き裂いていた」。自分の家族は死に瀕しているが、医師は生きている。その明暗を分ける防護服を破り、医師に「一緒に死んでくれ」と詰め寄る家族はもはや半狂乱状態だ。
山東省から湖北省に派遣される看護師。母親でもあるこの女性が荷造りを進める傍らで、今生の別れを予感したのか、5~6歳とおぼしき男の子が必死にわめく。「病気がうつったらどうするの。病気(の治療)なんて誰かがやればいいじゃないか。このドアから出ないで。ママにいてほしいんだ」――。春節入りした中国で、国民の涙を誘ったのがこの動画だった。
同31日、自撮りの画像とともに病院の内部事情を暴露するツイートが拡散。「病院は私が死んでないとわかると、私の酸素(吸入の管)を抜いた。最善を尽くすと医者は言うが何もしていない。(私を)殺そうとたくらんでいる」。この患者にはまだ、スマホを操作する力があるようだ。中国政治の内部事情に詳しい在日中国人は「地方政府はSNSで拡散するこの患者を邪魔者扱いしている可能性がある」と言う。
2月1日、自殺現場の動画が着信した。武漢市武昌区で自殺者が出たようだ。動画に添えられたコメントは「男性は病院をたらい回しにされた揚げ句、橋からの飛び降り自殺を選んだ」。
「マスクも買った、消毒液も買った」と一安心する男性が、体に消毒液を吹き付けて車に乗り込んだ。たばこに火をつけた瞬間、火だるまに。同2日、焼け焦げた男性の画像が飛び交った。
中国のSNSからは断末魔の叫びが聞こえてくる。 (つづく)
(姫田小夏/ジャーナリスト)