毎年500か所が消滅! 全然止まらぬ「ガソリンスタンド」衰退の末路とは

20年で4割減少とその背景

資源エネルギー庁のデータによれば、全国のガソリンスタンド数は、2022年度末で2万7963か所となり、前年度から512か所減少している。2023年度末には2万7414か所となり、さらに549か所減少している。このように、毎年500か所以上のガソリンスタンドが減少している。

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2002(平成14)年度には全国に5万か所以上のガソリンスタンドが存在していたが、20年間でその数は

「4割以上」

減少している。背景には、世界的な

・低炭素や低エネルギーの推進
電気自動車の普及
・ガソリン車の燃費改善

があり、ガソリンの需要が減少していることがある。ただ、急速充電器の設置を検討しても、コストが高く諦めざるを得ないケースが多い。

さらに、他の業種と同様に、

・人手不足
・後継者不足

もガソリンスタンドの減少に拍車をかけている。その結果、廃業や撤退を検討せざるを得ない状況が続いている。しかし、ガソリンスタンドは地域で広く認知されているインフラであり、燃料販売以外にも活用の可能性がある。

そこで今回は、地域活性化の視点から、ガソリンスタンドというインフラの新たな可能性について考えてみたい。

ガソリンスタンドを取り巻く問題

資源エネルギー庁の調査によると、過疎地のガソリンスタンドの事業継続に関する意向は、2017年度末時点で「継続する」が72%、「未定」が19%、「廃業を考えている」が9%となっている。この9%の廃業を検討している割合は、ガソリンスタンドの減少傾向から見ると衝撃的な数字だ。

また、ガソリンスタンド経営の問題としては、「燃料油販売量の減少」が72%、「粗利益の減少」が65%、「従業員確保の難しさ」が32%、「後継者確保の難しさ」が8%と報告されている。

ガソリンスタンドを維持し、地域の自動車交通を継続させるためには、利益をどう確保するかが課題だ。従業員や後継者の確保が難しいなかで、無人化を進めることはできないため、2018年頃から全国的な対策を考えざるを得なくなった。

2019年4月19日には、消防庁の危険物保安室から各都道府県の消防防災主管部長や東京消防庁・各指定都市消防長に向けて、「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」が出された。この資料では、給油取扱所がさまざまな業務を行うことを認める内容が含まれており、特に次の業態が例示されている。

・コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの併設
・喫茶店
・コインランドリー
・簡易郵便局や宅配ボックスによる宅配物の取り次ぎ
・その他

これまで消防法の観点からサイドビジネスに消極的だったが、ガソリンスタンドの持続可能性を考慮し、併設を認める判断にシフトしたのである。

ガソリンスタンドの新業態

前ページで書いた、

・コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの併設
・喫茶店
・コインランドリー
・簡易郵便局や宅配ボックスによる宅配物の取り次ぎ
・その他

について、それぞれ詳しく説明していく。

●コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの併設
最近では、ガソリンスタンドにコンビニやスーパーマーケットが併設されるケースが増えている。消費者にとっては、給油のついでに飲み物やお菓子、お弁当、雑貨などを手に入れられるのが便利だ。ガソリンスタンド側も、集客効果を高め、油以外の収益を得ることができる。また、乙4資格(危険物取扱者乙種第4類)を持った従業員がコンビニ店員も兼ねることで、人件費の削減と安全性の確保が期待できる。

●喫茶店
ガソリンスタンドに大手のカフェチェーンが併設される例も増えている。コーヒーや軽食を楽しむことができるため、洗車の待ち時間などに居場所を確保できるのが魅力だ。ガソリンスタンド側は、他店との差別化を図ることができ、最近ではオリジナルのカフェを併設する事例も見られる。例えば、焼き立てパンを名物にして差別化を図る店舗もあり、集客効果を狙っている。

残りは、

・コインランドリー
・簡易郵便局や宅配ボックスによる宅配物の取り次ぎ
・その他

である。

多様なサービスの共存

それぞれ詳しく説明していこう。

●コインランドリー
最近では、通常のコインランドリーに加えて、大型洗濯機を設置し、自家用車で持ち込みやすい布団の丸洗いができる店舗も増えている。また、衣類を預けると洗濯して畳んでくれる代行サービスを提供することで、他の店舗との差別化を図っている。さらに、コインランドリーを利用するとガソリン代が割引になるサービスもあり、相乗効果を生む可能性がある。コインランドリーを利用することでガソリン代が安くなると、集客力が確実に向上する。

●簡易郵便局や宅配ボックスによる宅配物の取り次ぎ
簡易郵便局はガソリンスタンドとの併設が期待される分野であるが、金融機関の性質から協働事例はほとんど見られない。一方、宅配ボックスは増加している。共働きやひとり暮らしの世帯が増えるなか、近くのガソリンスタンドで宅配便を確実に預かれるサービスが提供されれば、消費者にとって非常に便利だ。重い荷物や大きな荷物も車で簡単に引き取りやすくなる。“通販の拡大”に対する懸念もあるが、連携が進むことで効果が期待される。

●その他
これまで紹介した全国的に見られる併設事例に加えて、横浜市戸塚区にあるストレッチ専門店の併設がユニークな例として知られている。車のメンテナンス中に体をリフレッシュできることが魅力だ。また、岐阜県の南西部にある本巣市(もとすし)には野菜直売所を併設したガソリンスタンドも存在する。今後は、役所の出張所や金融機関の出張所、クリニック、福祉ステーションなどの併設も考えられる。車で訪れることを考慮したエリアの拠点としての利用が期待されている。

以上、五つの提案、いかがだったでだろうか。

求められる経済効果の可視化

現代では多くの人が自動車を運転するため、ガソリンスタンドの“位置”が地域で重要視されている。

多くの人が車で訪れる特性を背景に、さまざまな連携事例が考えられる。消防法の緩和により、ガソリンスタンドと他業種の連携が進んでいるが、上記のようにパターン化してしまい、新しい連携事例は出てきていない。

消費者のニーズを踏まえ、ガソリンスタンドへ車で向かう際に何が同時に満たされるとうれしいかを考慮し、新たな連携事例の創出が求められる。

2020年度以降の規制緩和により、施設の併設による経済的効果が今後見えてくるだろう。また、セルフ給油所への移行による固定費の削減効果も出始めており、

「施設の併設が利益拡大につながる」

との見方は調査会社でも根強い。このことが、地域の自動車環境の維持と活性化を同時に実現できることを期待している。

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