東日本大震災の大きな傷跡が残る宮城県石巻市の中心市街地で、民間主導による再開発構想が相次いで浮上している。分譲住宅や商業施設などが6カ所で計画され、本年度から順次建設が始まる見通し。震災前から空洞化が進んでいた地域に住民が戻り、市街地が再生できるかどうか注目される。
再開発事業が計画されるのは旧北上川に近い中央1~3丁目と立町1、2丁目の計約4.5ヘクタール。分譲住宅のほか、災害公営住宅計400戸前後の建設も検討されている。
立町2丁目では地権者5人が既に再開発に同意し、設計案も出来上がった。年度内に着工し、来年度中に完成するスケジュールを描いている。
設計案によると、100年以上の歴史を持つ日本庭園をコの字形に取り囲むように、災害公営住宅(約50戸)や社会福祉施設などを整備する。3~4階建てで、延べ床面積約5300平方メートル。津波対策で1階は吹き抜け構造の駐車場か店舗に利用し、住居は設けない。
地権者代表の会社経営浅野仁一郎さん(61)は「中心部の居住人口を増やしたいとの思いを地権者で共有し、考えてきた。活性化の呼び水にするため、一刻も早く実現させたい」と意気込む。
中心市街地の再生をめぐっては、民間主導で検討する協議会が昨年12月に発足。中低層の建物を基本に、津波対策で1階を非居住ゾーンとするなど立町2丁目の計画を再開発のモデルにすることを決めた。
周辺はJR石巻駅や市役所のほか、2015年度中の移転開業を目指す市立病院などが徒歩圏内に収まる。市も復興基本計画で「中心市街地の再生」を重点プロジェクトに位置付けていることから、民間の再開発事業に期待を寄せる。
課題は地権者側の求める災害公営住宅の買い取り。制度自体は県復興住宅計画に盛り込まれているが、買い取り実績がほとんどなく、県と石巻市などは仕組みづくりを急いでいる。
中心市街地では6カ所以外にも再開発の動きがあることから、市基盤整備課は「一つが形になれば地域再生の起爆剤になる。買い取りのスキームを早く示し、地権者と連携したい」としている。