気が変わった、お金ない…「代引き」で受け取り拒否のトラブル相次ぐ サービス中止の企業も

商品の配達時に代金と引き換える「代引き」サービスをめぐるトラブルが目立っている。注文した利用者が、商品が届いたのに「気が変わった」と受け取りを拒否する悪質なケースもあり、店側の経営を圧迫している。自宅で簡単に買い物できるインターネットショッピングの利用世帯は4割に迫る勢いだが、モラル低下もあり、サービス中止に踏み切る企業も出てきた。(大渡美咲)

「気が変わった」

 雑誌で何度も取り上げられるなど話題のチーズタルト専門店「リトルローザンヌ」(岡山県)も、代引きに頭を痛めている店の一つだ。《気が変わった》《お金がない》《忘れていた》。さまざまな理由を並べ立て、受け取りを拒否する注文者たち。その数は月40件ほどに達することもあるという。

 タルトは賞味期限が短く、返品されたものは廃棄せざるを得なくなる。さらに本来かかるはずのない返却時の送料も負担しなくてはならず、渡辺昭太専務は「(代引き拒否による)損害は小さくない」と語る。

 ただ、代引きはクレジットカードを持たない人やコンビニエンスストアで決済しようにも近くにコンビニがない地域に住む人も利用できるため、人気が高い。渡辺専務は「店側は弱い立場。止めようにもやめられない」と訴える。

「やめたらストレス減った」

 公正取引委員会で勤務経験がある、あさひ法律事務所の山本陽介弁護士によると、代引きを拒否した場合、法律上は注文した側に商品返品に際して発生した余分な送料を負担する義務が生じる。ただ回収には手間とコストがかかり、「泣き寝入りせざるを得ないのが実情」という。

 こうした中、代引きサービスそのものを止める企業も出始めている。

 玩具大手バンダイは8月23日から、公式ショッピングサイト「プレミアムバンダイ」で取り扱っている商品の一部について、代引きなどの後払いの中止に踏み切った。理由について「代金引換時の不正行為や後払い決済での規約違反行為などの悪質な迷惑行為が発生している」ことを挙げている。

 《ネットショップ勤務だだけど代引きやめた。多少注文は減ったが余計なコストもストレスも減った》《先月10回連続の代引き受け取り拒否にとうとうキレてやめてしまいました》

 バンダイ同様、ネット上には代引きサービスをやめたことをうかがわせる事業者のものとみられる書き込みが散見される。

 自宅で簡単に買い物ができるネットショッピングは、すっかり一般的になった。総務省の家計消費状況調査によると、平成14年のネットショッピング利用世帯は5・3%だったが、30年には39・2%と8倍近くに増加している。こうした半面、店に足を運ぶ必要がなく、指先一つで簡単に注文が完了する手軽さが代引き拒否の温床にもなっているといえる。

 山本弁護士は、「受領を拒否しても代金支払い義務を免れるわけではないことを、消費者に一層周知していく必要がある」と強調した。

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