生鮮カツオの水揚げ22年連続日本一の気仙沼漁港(宮城県気仙沼市)で、1カ月もカツオの水揚げがない状態が続いている。水揚げ量は昨年同期の1割強にとどまり、主力の一本釣り船は一度も姿を見せていない。魚の群れが北上しないためで、宅配便や加工業者の生産に影響が出ている。
15日現在の気仙沼漁港のカツオ水揚げ量は121トン。初水揚げは例年並みの5月14日(巻き網船1隻、5トン)で同15日(同2隻、計31トン)、17日(同4隻、計85トン)と順調だったが、その後はぴたりと止まった。
昨年同期(6月15日現在)の水揚げ量は860トン。この時期までに延べ89隻が入港していた一本釣り船も、今年は入港がない。
漁業情報サービスセンター(東京)によると、例年茨城県から三陸沖周辺まで北上する漁場が、今年は三重県から神奈川県沖にとどまり、勝浦漁港(千葉県)などの水揚げが多い。
カツオ資源に詳しい茨城大人文社会科学部の仁平章客員研究員によると、現在取れているカツオは3キロ前後。通常、今の時期に三陸沖で取れるカツオは2キロ前後で、仁平研究員は「南でカツオの成長が進み、産卵に備えて北上しない可能性がある。カツオ自体が減る中、今年の三陸沖漁場は厳しいだろう」と指摘する。
2018年の気仙沼漁港の生鮮カツオ水揚げ量は約1万9100トン。東日本大震災の津波で被災しても、水揚げ日本一を守ってきた。カツオは地域と密接につながり、不漁の影響は大きい。
気仙沼郵便局が水産加工会社と提携し、カツオのたたきを全国に届けるゆうパックは、発送見送りが続く。今月10日の予定だった出発式は17日に延期し、結局中止になった。先月7日の受け付け開始から2000以上の申し込みがあるが、担当者は「見通しが立たない」と嘆く。
カツオの角煮が看板商品の一つである水産加工業「マルチ村上商店」は毎年6、7月に1年分のカツオを買い付けるが、今年は確保できない。村上祐一社長は「時期がずれてサイズが大きくなれば、仕入れ値も高くなる」と心配する。
飲食店の新鮮なカツオは大事な観光資源。市内のある居酒屋は夏のお通しが大盛りの気仙沼産カツオだが、今年は千葉県水揚げのものを提供。店員の女性は「本当は気仙沼のカツオを食べてほしい」と漏らす。
気仙沼漁協の斎藤徹夫組合長は「復興のシンボルでもあり、気仙沼が元気になるかどうかはカツオの水揚げに左右される。一日千秋の思いで待っている」と話した。