宮城県気仙沼市の避難所で東日本大震災の発生直後から子どもたちが手作りした壁新聞「ファイト新聞」の複写版が完成し、製作したセイコーエプソン(長野県諏訪市)から、壁新聞の保存を企画した団体へ24日、引き渡された。全国の巡回展示などに活用される。
ファイト新聞は、避難所となった気仙沼小学校での暮らしを、イラストを交えて明るく伝えた。避難生活が一段落した7月3日の第50号まで続き、避難者を励ました。
マジックや蛍光ペンで書いた文字が薄れたり消えたりしており、復元に約1カ月かかった。担当した中村健三さん(58)は「大変な作業だったが、やりがいがあった」と話した。
複写版は3部あり、1部を気仙沼市内で展示し、1部は国連教育科学文化機関(ユネスコ)に寄託。もう1部を巡回展示などに使う。原本は宮城県の美術館で保管する。
壁新聞の保存は、文化を通した復興支援を目指して写真家やデザイナーが設立した団体「復興博」(東京)が発案した。事務局メンバーで写真家の松田典子さんは「大人たちを元気にしたいという素直な気持ちが伝わる。震災の記憶を残すため活用したい」と語った。