昨年、生息しないとされたクマが相次ぎ目撃された宮城県気仙沼市の大島で今年もクマが出没している。気仙沼大島大橋の開通で本土とつながった安心感もあり、昨年に比べて島民の受け止めは冷静だ。一方、橋の開通で激増した観光客への注意喚起が課題となりそうだ。
「島にクマがいるのは間違いないが、対応を間違わなければ襲われない。慌てないでほしい」。23日に大島中で開かれた生徒がクマの習性などを学ぶ勉強会で、県の担当者が強調した。
島で今年初めて足跡が見つかったのは7日。民家の敷地内に子グマのものとみられる足跡があった。8日には2件、11日には1件、それぞれクマの目撃情報があった。勉強会は相次ぐクマの出没を受け、急きょ学校が開いた。
昨年、島はクマの出没に揺れた。5月下旬に初めて目撃されると、島民から年間25件の情報(ふんなどの痕跡も含む)が市などに寄せられた。市全体(49件)の半分に当たり、市は島内3カ所にわなも仕掛けた。
「明らかに別の動物のふんで、目撃情報には数えなかったものも多かった」(県気仙沼振興事務所林業振興部)。クマへの免疫がなく離島で逃げ場がない恐怖心から、島民が多くの情報を寄せたとみられる。
今年は別の動物と思われる間違った情報は県、市に寄せられていない。市農林課は「勉強会などでクマの習性を知ってもらった。橋が架かり、本土から警察や市の職員が駆け付けられるのも大きい」と分析する。
一方で増加する観光客への注意喚起の方法は定まらない。海水浴場がオープンする夏場は人出のピークとなる可能性も高い。星を見るために島内を散策した観光客が夜間に行動するクマと遭遇する危険性もある。
市産業部の鈴木哲則部長は「県とわなの設置について協議している。観光客に対して最小限の注意喚起は必要だ。クマの目撃情報を注視しながら対応を検討したい」と話している。