ドーナツ・チェーンの老舗として知られるミスタードーナツが業績低迷に苦しんでいます。鳴り物入りで日本に上陸したクリスピー・クリーム・ドーナツも一部店舗の閉鎖に追い込まれるなど厳しい状況です。ドーナツ業界に何が起こっているのでしょうか。
セブンもドーナツ事業の不振に苦しむ
ミスタードーナツ(ミスド)を展開するダスキンの2016年3月期決算は売上高が1652億円、経常利益が 67億円と減収減益でした。同社の本業である清掃関連事業はまずまずでしたが、ミスドを中心とした外食部門が足を引っ張っており、外食部門単体では15億 円の営業赤字となっています。こうした事態を受けて、ミスドは今年の3月から主力商品の値下げに踏み切りました。
2006年に日本市場に進出し、以前は「行列ができるドーナツ店」として話題になっていたクリスピー・クリーム・ドーナツも相次いで店舗を閉鎖しています。60以上あった店舗は、現在は45店舗にまで減少しました。
ドーナツが不振と聞くと、コンビニ大手のセブン−イレブンが2014年から大々的にスタートさせたセブンカフェ ドーナツの影響が大きいのではないかとイメージしてしまいます。しかし、セブンもドーナツ事業の不振に苦しんでおり、2016年の1月にはメニューを刷新 してテコ入れを図っている状況です。
ファミリー層の需要は確実に減少
個別の要因はいろいろありますが、基本的に ドーナツ市場全体が縮小しているとみてよいでしょう。この傾向はミスドの過去の売上高の推移を見るとよく分かります。同社は全国で約1270店舗を展開し ており、ドーナツ市場ではほぼ寡占状態です。同社の売上高はそのままドーナツ市場と考えることができます。
2016年3月期におけるミスドの全店売上高は914億円でしたが、5年前の2011年3月期には1194億円、7年前の2009年3月期には1338億円の規模がありました。ドーナツの売上げは毎年減少が続いているのが実態なのです。
ドーナツを購入する層は主にファミリーと若い女性と言われますが、少子化の影響でファミリー層の需要は確実に減少しているでしょう。労働者の実質賃金が 低下していることからお小遣いが減り、学生などが気軽にドーナツとコーヒーを楽しむことができなくなっている可能性もあります。
クリスピー・クリーム・ドーナツは、ドーナツの新しい顧客層を開拓しようとしたわけですが、その目論見は外れてしまったようです。市場のパイの奪い合い ということであれば、いくらセブンが圧倒的な店舗数を背景に攻勢をかけても、その成果には限度があるというのもうなずける話です。