水泳授業、外部プールで 新築や改修より低コスト 茨城県内小中学校切り替え進む

■受け皿不足、取り合いも 

夏は学校プールで水泳の授業-。こんな光景が変わりつつある。茨城県内の公立小中学校で、自校のプールを使わず外部の施設を利用する動きが広がっている。自校プールの老朽化が進み、新築や改修に多額の費用を投じて維持するより安く済む事情がある。ただ、県境を越えて泳ぎに行ったり、施設に空きがなくなり自治体同士で取り合いになったりする例も出ている。「先んじて対策しないと後が苦しくなる」と教育当局の悩みは尽きない。(取手龍ケ崎支局・鈴木剛史)

■1シーズン120万円

20日昼、龍ケ崎市中里3丁目の市総合体育館たつのこアリーナ。大小2面の屋内プールで、市立大宮小の全校児童約100人が水に親しんでいた。外部の施設を使った水泳の授業だ。

同市では、自校プールが老朽化し利用に適さなくなったのを背景に、2008年度から授業を外部施設に切り替える動きが進んだ。全17小中学校のうち6校がアリーナで授業を行っている。約10コマの授業をこなすため、アリーナは学校によって10月ごろまで水泳の授業がある。

市教委によると、1校当たりのプールの維持管理費はワンシーズンで、上下水道代を含め平均約120万円に上る。18年度、市内のスイミングスクールとも契約し、民間プールでの授業が市立松葉小で始まった。年間約180万円を支出するが、市教委は「長い目で見れば安い。コーチも付くため、泳力の向上につながる」と効果を強調する。

■「もう造らない」

県内の公立小中学校(義務教育学校含む)で、自校プールを使う市町村は今や少数派になった。

茨城新聞の調べでは、結城▽筑西▽坂東▽桜川▽つくばみらい▽八千代▽利根の7市町に限られる。その他の37市町村は、少なくとも1校が、外部の施設や近隣の学校のプールを活用している。

このうち行方▽大洗▽河内▽五霞の4市町は全面的に外部施設に移行した。少子化の中、校舎を建て替える際、コストの観点からプールを造らない例も水戸市や石岡市であった。

厳しさを増す財政事情も絡み、切り替えは続きそうだ。県北地域の教育関係者は「今あるプールは使えるうちだけ使う。財政上、新しいプールは原則造らない方向。他の自治体も事情は同じではないか」とみる。

■県境越えて

地元に適した施設がなかったり、空きがなくなったりして確保に苦労する自治体も現れ始めた。

稲敷市の市立中2校は、利根川を挟んだ千葉県印西、香取両市の民間プールまで赴く。県境を越えるのは県内で唯一の事例だ。

県南地域のある自治体では、民間施設に利用を打診したところ、他の市町村の学校で埋まっているとして断られたという。「『冬しか空いていない』と言われたら、どうしようもない」と担当者。

学校のプールの新築には億単位、大規模改修の場合でも数千万円の費用がかかる。ある市教委幹部は「プールは“時限爆弾”みたいなもの。いつ巨額の出費が必要になるか分からない。外部施設に切り替えようとしても、受け皿がなくなってきている」と漏らす。

★水泳の授業

小中学校では学習指導要領で必修と定めている。1955年に起きた旧国鉄連絡船「紫雲丸」の衝突沈没事故で、修学旅行中だった児童生徒ら168人が死亡したことを教訓に、国策的に推進された経緯がある。プールの設置に関しては、義務ではなく、設置者の市町村の裁量が大きい。

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