宮城県は8日、沿岸漁業権を民間企業にも開放する水産業復興特区の認定を、今週中に国に申請する方針を固めた。東日本大震災の復興特区法に基づき4日に開いた地域協議会の経緯を踏まえ、申請環境が整ったと判断した。漁業権の免許が更新される9月を目標に実現を目指す。
特区の対象地区は、津波でカキ養殖業が大きな打撃を受けた石巻市桃浦地区。同地区の養殖業者と水産卸の仙台水産(仙台市)が出資する「桃浦かき生産者合同会社」に適用する。
県は8日、特区適用に反対する宮城県漁協が地域協議会で出した要望に書面で回答。特区適用で効率的な漁業生産が可能になる意義を伝えた。県は県漁協側への説明を尽くしたとしている。
地域協議会で県は、特区申請で国に提出する復興推進計画の素案を示した。素案には、漁業生産額の拡大や流通・加工分野の雇用創出を目指すとする目標を掲げた。
議論の結果、地元漁業者のなりわい維持につながり、カキ養殖以外の水面利用にも支障を及ぼさないとの認定要件を満たすと判断した。
県漁協は協議会で「特区で漁場が分断されれば、コミュニティーが崩壊する」とし、適用反対の姿勢を崩さなかった。
村井嘉浩知事は8日の定例記者会見で「担い手が激減し高齢化が進んでいる。企業が支え、みんなが繁栄できる浜のモデルをつくることができる画期的な制度だ」と導入の意義を強調した。
水産特区は漁協に優先的に与えられる漁業権を企業にも開放し、民間投資を呼び込もうとする制度。村井知事が2011年5月、政府の復興構想会議で創設を提案し、復興特区法に盛り込まれた。