新型コロナウイルス感染拡大でマスク不足が続く中、福島県二本松市の富樫縫製がつくる「水着マスク」が売れている。主力である水着の生地の端材を生かしてマスク生産に乗り出したところ、全国から注文が相次ぐヒット商品になった。
中国から買っている水着の生地の輸入が止まり、水着の生産が難しくなったのがきっかけだ。マスクを求め行列ができる光景を見た社員が「端材でマスクを作れば、少しは社会の役に立てるかも」と提案した。
早速、富樫三由社長が自ら試作を重ね、商品化にこぎつけた。1枚5分程度で作れるといい、社員の伊藤吉子さんは「水着に比べれば簡単」と話す。
1枚500円で、洗えば繰り返し使える。3月中旬に同社ホームページから通信販売を開始。直後から注文が殺到し、500〜1千枚が数分で売り切れるという。予約を受け付けないため、閲覧が後を絶たず、アクセスは1日8万超にのぼるという。
通販のほか、今月からは1日あたり道の駅「安達」で200枚、スーパー「いちい」の県内全16店舗で計1千枚を売り始めた。市内にある二つの工場をフル稼働させ、1日に4500枚を作る。
各地の病院や企業、県からも依頼されたが、生産が追いつかないほどだ。二本松市内の小中学生向けのマスクも生産した。同社には感謝を伝えるメールやファクス、手紙が100通以上、届いた。富樫社長は「商売を始めて50年。モノを売ってこれだけ感謝されるのは初めて」と目を丸くする。(関根慎一)