本格的な夏を前に、水に少量の果汁やフルーツの香りなどを加えた「フレーバーウオーター」が人気を集めている。ジュースほど甘くなく、カロリーは低い。さわやかな香りとすっきりとした後味が消費者に好評で、年々市場が拡大。今年も各社が新商品を発売し、目移りする品ぞろえとなっている。
■すっきり水分補給
フレーバーウオーターは見た目は無色透明の水だが、飲むとほのかなフルーツの香りや味わいが漂う。
近年、夏場は電力不足の懸念からエアコンの使用が控えられ、脱水症予防のため、こまめな水分補給が呼びかけられている。ミネラルウオーターも人気だが、単なる水では飽きがくる。一方、糖分の多いジュースなどは高カロリーなうえ、後味が気になるときもある。
そこで、すっきりと飲めるフレーバーウオーターに人気が集まっているのだ。
調査会社、富士経済が昨年10月にまとめたリポートによると、フレーバーウオーター(発泡性商品を除く)市場は平成23年の販売額が約236億円だったのに対し、25年(見通し)は1・8倍の437億円に急成長。27年には534億円に達するとみられている。
■炭酸でより爽快に
拡大する市場を狙って飲料各社は新商品を続々と投入している。コカ・コーラシステムは19日、ロングセラー「い・ろ・は・す」ブランドの炭酸水「スパークリングれもん」を発売した。
ミカンとリンゴ2種類のフレーバータイプを展開してきた「い・ろ・は・す」は、市場で約7割の販売シェアを占め、マーケットを牽(けん)引(いん)してきた。スパークリングれもんは瀬戸内地方で獲れたレモンのエキスを使用。爽快感がある炭酸水をラインアップに加え、市場拡大を目指す。
サントリー食品インターナショナルは先月8日に「南アルプスの天然水&朝摘みオレンジ」を発売した。精製水で作った「やさすい!」シリーズでフレーバータイプを発売していたが、人気の天然水シリーズにも投入。年間の出荷目標は200万ケース(1ケースは550ミリリットル×24本)だが、4月だけで4割にあたる80万ケースを出荷したといい「予想を上回る人気」(同社担当者)という。
■消費者に安心感を
サクランボやレモンなど7つの素材を溶け込ませた「なないろwater,s」を今月13日に発売したのはアサヒ飲料。「ひとつのフレーバーで他社と勝負するより、異なる特色を出した」(広報担当)という。
キリンビバレッジも同日、国内1位の売り上げを誇る輸入ミネラルウオーター「ボルヴィック」に、「フレンチカシス」のフレーバータイプを加えた。同社は平成19年にフレーバーウオーターに参入。今回で7品目となった。
人気沸騰の理由について、あるメーカー担当者は「日本人は余分なものが入っていないものを好む傾向がある」と分析。メーカー側はフルーツの産地や天然水由来であることなどを明記し、消費者の購買欲を刺激している。
少子高齢化で国内需要が減少傾向にある中、フレーバーウオーターは近年まれに見るヒット商品になっている。(中山玲子)