今、企業が求める資格は何か?
本当に「資格を仕事に活かしたい」なら、その資格の需要がどれくらいあるか、という雇用市場のニーズはしっかりと押さえておきたいもの。そのためのもっともシンプルな方法が、実際の求人情報をチェックすることです。
「今」「実際に」存在する求人情報の中で、どのような資格ホルダーが求められているのか? 資格取得をきっかけに就職・転職を考えている人にとっては大いに気になるところです。
そこで当サイトでは、全国のハローワーク(公共職業安定所)で受け付けた求人情報をウェブ上で閲覧できるサイト、「ハローワークインターネットサービス」を使って、定期的に「仕事に活かせる資格」としておなじみの資格の求人数をリアルに集計しています。
「ハローワークインターネットサービス」では、詳細条件入力機能を使えば「免許・資格を採用の必須条件とする求人」を検索することができます。
ハローワークインターネットサービスの使い方
トップページからでは、このような検索機能があることが「わかりにくい」のが難点。また、資格の名称での検索ではなく、厚生労働省が定めた「免許・資格コード」で検索しなければなりません。
ちょっとわかりにくいので、以下に手順を紹介しておきましょう。
ハローワークインターネットサービス:資格で求人情報を探す手順
1:求人情報検索(トップ画面)で求人情報の種類、就業場所や就業形態の希望をチェック
2:「検索」をクリック
3:求人情報一覧表示(詳細条件入力画面)
4:「応募条件」をクリック(別ウィンドウで開く「免許・資格コード一覧」で、自分が調べたい免許・資格のコードをチェック)
5:応募条件条件入力画面で免許・資格コード欄に該当コードを記入
6:検索開始
今回は特定の地域や給与水準などを指定せず、以下の資格について調査しました。( )内は免許・資格コードです。
・建築士(1級:1301、2級:1302)
・インテリアコーディネーター(1308)
・基本情報技術者(1505)
・ITパスポート試験(1538)
・情報セキュリティアドミニストレータ(1515)
・衛生管理者(第1種:2202、第2種2203)
・司法試験(2401)
・司法書士(2402)
・弁理士(2403)
・通関士(2405)
・公認会計士(2501)
・税理士(2503)
・CFP/AFP(2505)
・社会保険労務士(2510)
・中小企業診断士(2511)
・不動産鑑定士(3201)
・宅地建物取引士(3207)
・実用英語検定(1級:3307、準1 級:3308)
・TOEIC(730点~:3322、600点~:3323、470点~:3324)
・秘書検定(1級:3401、2級:3402、3 級:3403)
・簿記検定(日商1級:3623、2級:3624、3級:3625)
・MOS(エクセル上級:3815、一般:3816、ワード上級:3817、一般:3818)
・MOT(3819)
・販売士(1級:4101、2級:4102、3級:4103)
・貿易実務(4108)
・証券外務員 (4201)
・MBA(8001)
・CPA米国公認会計士(8005)
※調査期間は2019年6月6日~20日。「免許・資格を採用の必須条件とする求人」の中から、この期間内の資格別フルタイム求人数を週1回集計。
※以前調査していた「上級シスアド・初級シスアド」のコード廃止に伴い、後継資格の「ITパスポート」に変更。
※「免許・資格コード一覧」には、技術、医療・保健衛生・社会福祉、事務処理、営業・販売・サービス・保安、運輸・通信、製造関連技能、電気・建設・土木
工事・建設機械、海外資格関連など全8領域に渡る免許・資格が網羅されており、より詳細な求人ニーズの把握が可能。技術、技能系資格が多いのも特徴です。
この一覧を見ることにより、今まで知らなかった免許・資格に対する求人ニーズに気づくなど、二次的な使い方も可能です。ただし、昨今誕生している新資格への対応は必ずしも十分ではないため、その場合は類似の免許・資格の動向を参考にしてみると良いでしょう。
第10位:基本情報技術者(前回9位)
前回の9位から一つ下げての10位。とはいえ、PG、SE職を中心に安定したニーズがある点は変わりません。
フレックスタイム制や土日勤務などの変則的勤務が多い傾向がありましたが、そうではない条件の求人割合も増加しています。特に経験者では、従来よりも勤務条件の選択肢が広がっている印象です。
このところ続いている、関東圏を中心とした情報技術関連校の非常勤講師の大規模求人は今回も継続しています。
※( )内は、前回(2019年3月集計分)順位。以下同様。
第9位:インテリアコーディネーター(前回10位)
ここのところじりじりと順位を下げてきていますが、今回は1つ順位を上げました。
インテリアコーディネーター職での求人以外にも、営業職、営業アシスタント職、受付業務など、不動産業界内では幅広い職種でのニーズがあるのも強みです。
今回はインテリア関連の販売職での非正規大規模求人がありました。やはり土日休より平日休が目立つのも、この業界ならではの特徴です。
第8位:証券外務員税理士(前回6位)
年間を通じての安定的なニーズというよりも、大口求人の影響等によって波のある資格。そのような求人では、非正社員や派遣社員などの割合が多めなのも特徴的です。
今回は有期雇用型派遣と証券営業職の正社員の大規模求人がありましたが、他と比べると伸びが鈍ったようで順位を下げたようです。
第7位:税理士(前回8位)
従来の税理士事務所求人だけでなく、企業の経理職での求人もコンスタントになってきた分、より安定したニーズがあります。
税理士補助職などを中心に、科目合格でもOKという求人があるのも魅力。長期計画で資格取得に向けて挑戦中という方も、先に実地でキャリアを積むのも良いでしょう。基本情報技術者と同じく、こちらも前回同様、簿記関連校の非常勤講師の大規模求人がありました。
第6位:社会保険労務士(前回7位)
コンサルティング業、行政、社労士事務所、一般企業の総務や人事職など、業種、職種ともに安定して幅広いニーズがあるのが特徴。珍しいところでは、内部通報窓口運営会社や団体理事などもあります。
社労士事務所の補助業務では非正社員求人の割合が高め。正社員求人で、1年間などの変形労働時間制求人の割合が増加しています。
第5位:実用英語検定(英検)(前回5位)
求人数は2級>準1級>1級の順で変化なし。準1級からは派遣社員など、非正規の求人割合も増えてきますが、TOEIC600点以上との合わせ技では、正社員の可能性も高まります。
以前から「英検と言えば教育分野」という感じで、こども向け英会話講師などの求人が多かったのですが、今回はインターナショナル保育園でのスタッフ募集なども。時代を反映していますね。
第4位:TOEIC(前回4位)
すべてのランクの総計でのランクイン。以前は最高レベルである730点以上と600点以上の求人数がほぼ同じ割合でしたが、ここのところは600点以上>730点以上の順。
730点以上は、通訳・翻訳、海外現地スタッフ、国際人事職など、英語のスペシャリスト求人が多く、かえって派遣などの非正社員求人が入ってくるのも特徴的です。
ランクが下がるにつれて正社員以外の求人の割合が増えてくる傾向は変わりませんが、600点前後で、一般事務職、留学カウンセラー、スクールスタッフなどの正社員求人も見つかります。
第3位:宅地建物取引士(宅建士)(前回3位)
不動の3位。このところ猛追を受けていた4位のTOEICとの差は、今回は再び広がったようです。住宅販売、営業、事務など不動産業界を中心に、安定的に幅広い求人がありますが、業界経験者が優遇されるのも宅建の特徴。
いくら資格のニーズが高くても、それだけでは難しいといえます。正社員でも1年単位や1カ月単位などで勤務条件を見直す「変則制」求人が増えているのは、他の職種と共通の傾向です。
第2位:日商簿記検定(前回2位)
ランクは1級~3級すべての等級の総計です。等級ごとでは、3級と2級が、ほぼ拮抗しています。3級では派遣社員など非正社員の割合が多くなるのが特徴ですが、それでも正社員求人もけっこう見つけることができます。
経理職だけでなく、多くの事務系職種で歓迎される汎用性はピカイチですから、事務職を目指す方はやはり狙っておきたい資格です。前回に引き続き1級で、簿記系スクールの非常勤講師の大量募集があり、引き続き求人数を伸ばしています。
第1位:建築士(前回1位)
設計、施工管理、現場管理、耐震診断、技術職など、幅広い求人ニーズに応える高い汎用性で、もはや敵なし。安定的なニーズを保持し続けています。
人材不足の建設業界を反映してか、2級でも設計やプランニングなどの広い分野で正社員求人を見つけることができます。
このところのフレックスタイム制や1年や1カ月単位の変形労働時間制の求人割合の増加傾向は止まらないので、短期間で様々な現場を担当するような働き方が想定されます。
※今回の次点は4回連続で司法書士、次次点はMOS(エクセル、ワードの総計)でした。
一つ謎なのが、「衛生管理者」。数値だけ見ると、軽く1位の「建築士」を超えてしまうのですが、検索で出てくる求人のほとんどが調理関係。必要資格の欄にも「栄養士」「調理師」とあるだけで、なぜ「衛生管理者」のコードでこれが引っかかってくるのかよくわからない状況です。
正確性に欠けるため、やむを得ず今回は「衛生管理者」に関するデータはランキングに反映させませんでした。ご了承ください。
2018年から目立ってきている「変形労働時間制」での正社員求人の増加傾向は今回も継続中です。
「変形労働時間制」とは、一定の単位の期間について、週あたりの平均労働時間が法定労働時間の枠内に収まっていれば、1週または1日の法定労働時間の規制を解除することを認める制度のこと。
これまでにも、短い周期で業務量の変動がある「証券外務員」「通関士」などの職種では、1カ月や1年単位で働き方を見直す、この雇用形態での求人はありましたが、今回は「社労士」など、上記には該当しないイメージの職種でも同様の求人が増えてきた印象です。いわゆる「働き方改革」を視野に入れた動きかな?と予想しています。