沈下漁港にコクガン増 餌の海藻が堤防に付着

 東日本大震災で被災した三陸海岸南部の漁港に、渡り鳥のコクガンが多く飛来している。養殖いかだに付着した海藻を食べるため、本来は沖合にいる。津波で養殖いかだが減った一方、地盤沈下で潮が満ちた漁港の堤防に海藻が付着するようになり、餌場を移したとみられる。養殖設備や漁港の復旧が進めば沖合に戻ると考えられ、野鳥の研究者は「コクガンの動きは漁場再生の指標になる」と語る。
 コクガンは11月ごろに極東ロシアから主に北日本の沿岸部に渡り、3月まで越冬する。三陸海岸南部には例年、200~300羽が来ていた。県伊豆沼.内沼環境保全財団(宮城県栗原市)の嶋田哲郎主任研究員らのグループがこの冬、岩手県陸前高田市の広田湾から石巻市の北上川河口までの漁港約60カ所を2回ずつ調査した。
 1月上旬の調査で380羽のコクガンを確認し、うち約6割の220羽が漁港にいた。その約1カ月前の調査では、291羽のうち約4割の118羽が漁港で見られた。
 震災前、コクガンが漁港内にいるのはまれだったという。浸水で、餌となるアオサなどが堤防付近にも増えた。嶋田研究員は「大震災による環境の変化に生物が対応した例と言える。コクガンが沖合に再び増えれば、漁港の復旧が進んだことを意味する。復興のシンボルとして観察を続けたい」と話す。
 コクガンは国の天然記念物。環境省のレッドリストで絶滅危惧II類に分類されている。

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