沖ノ鳥島EEZ 海洋権益の保護強化に努めよ

広大な排他的経済水域(EEZ)の権益をいかに効果的に守るかは、海洋国家である日本が直面する重要課題だ。政府は具体的な保護策に万全を期さねばならない。

日本最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)のEEZで4月下旬、海上保安庁に台湾漁船が 拿捕 だほ されたことについて、台湾当局が抗議し、巡視船など3隻を派遣している。漁船保護を名目に、当面、EEZにとどまるという。

岸田外相が、台湾の巡視船について、日本の「申し入れにかかわらず入域させたことは極めて遺憾だ」と述べ、台湾側に出域させるよう求めたのは当然である。

日本の領海とEEZの合計面積は世界6位だ。中でも沖ノ鳥島は、日本の国土面積をやや上回る約40万平方キロのEEZを有し、豊かな水産・海底資源をもたらす。非常に大切な海洋権益である。

日本は「国連海洋法条約上、沖ノ鳥島は島としての地位が確立している。EEZは存在する」との立場だ。沖ノ鳥島の二つの小島は満潮時も海面に出ていることなどから、EEZを設定できない「岩」ではないとしている。

だが、漁船の拿捕を受けて、台湾の馬英九政権は突然、沖ノ鳥島は「岩」だと唱え始めた。こうした一方的見解は容認できない。

中国が2004年頃から、「岩」だと主張し、韓国も同調しているが、台湾は曖昧にしてきた。

今月20日の政権交代を前に、馬政権が態度を一変させたのは、疑問だ。台湾の世論を あお り、退任後も影響力を保ちたいという馬総統の思惑があるのではないか。

日本は、対日重視方針を示している民進党の新政権と対話し、事態の収拾を図らねばならない。

沖ノ鳥島は、中国から見れば、南西諸島からフィリピンを結ぶ第1列島線と、小笠原諸島からグアムを結ぶ第2列島線の中間に位置する。中国は海軍の西太平洋への本格的な遠洋展開をにらんでおり、地政学的にも価値が高い。

日本政府は、波浪や風雨による沖ノ鳥島の浸食を防ぐため、コンクリート製の護岸を設けている。さらに港湾施設などを整備し、島を確実に保全すべきだ。

沖ノ鳥島のEEZの有効管理が可能となり、中国の膨張主義的な海洋進出への 牽制 けんせい につながる。

離島の特性を生かし、気象観測や海洋生物の調査などの拠点としても活用したい。沖ノ鳥島の法的地位の補強になろう。関係省庁が連携し、戦略的に取り組むことが欠かせない。

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