沖合がれき回収難航 漁網破損の被害続く 宮城、福島県沖

 宮城県の沖合漁場で、海底に沈んだ東日本大震災のがれき回収が続いている。陸上分の処理は終えても、広い海域からの一掃は困難だ。一時より量は減ってきているが、漁網を壊すなど厄介な存在であることに変わりはない。福島第1原発事故の影響で回収が遅れていた福島県も、ことしから沖合での作業を本格化させる方針だ。(斎藤秀之)
 石巻市の石巻漁港近く。フェンスで囲まれた一角に流木やタイヤ、マット類などが積まれている。宮城県の沖合で回収された震災がれきだ。
 「いまも流木や金属片で漁網が切れる。布団の綿が絡んで使い物にならなくなることもある」。宮城県沖合底びき網漁協(石巻市)の大沢正明参事が話す。国の事業として、所属する13隻が通常操業しながら回収を続ける。
 震災後に岩手、宮城、福島3県で回収された海中がれきの推計量は表の通り。岩手県は昨年までに沿岸、沖合漁場とも作業を終えた。宮城も沿岸をほぼ済ませ、現在は沖合に重点を置く。
 福島県は沿岸を中心にがれきを除去してきたが、原発の避難区域内と沖合は手つかずの状態だった。県は「ことし中に作業着手できるよう調整している」(水産課)と説明する。
 宮城県の海域別にみると、沿岸部は回収が進み、2013年の回収量が11年の100分の1程度に激減したエリアもある。沖合は徐々に減ってはいるものの、13年の回収量は2600トン余りと、11年実績に比べて3割程度しか減らなかった。
 海中のがれきは1カ所に定まらず、潮流で移動している可能性が高い。漁業関係者は「宮城県沖では年を追って深い場所で回収されるケースが増えている」と指摘する。
 環境省の推計では、被災3県で海中に流出したがれきは480万2000トン。全体の発生量の2割程度とみられている。
 被災3県では、岩手、宮城がことし3月までに陸上でのがれき処理を終えている。宮城、福島両県の担当者は「海中分は終わりが見えない」と口をそろえた。

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