沖縄、「沖縄」でなくなるほどの劇的変動 イオンモールやUSJ進出、○量が190倍

沖縄経済への注目度が日に日に高まっている。3月1日付当サイト記事『沖縄が熱い!な ぜ経済成長率で東京抜き目前?観光客&進出企業激増、USJ進出との報道も』において、沖縄経済の現状と、経済成長率で近い将来、東京を抜く可能性がある ことを伝えた。その後、大手メディアでも「USJ沖縄進出計画」「沖縄貨物ハブ」など、沖縄経済のポテンシャルを伝える報道が相次いでいる。かつて著名な 経済学者が「沖縄経済が日本のフロンティアになる」と指摘していたが、現状はまさにその方向に進んでいるように思える。

●年間1200万人来場を見込むリゾートモール開業とUSJの進出計画

4月25日、沖縄本島中部・北中城村の米軍ゴルフ場返還跡地に建設されたショッピングモール、イオンモール沖縄ライカムが全面開業した。近隣住民らを招待 した22~24日のプレオープン期間中に21万人の来場があり、25日も開店前に1万1000人の列ができたという。敷地面積17万5000平方メート ル、専門店228店舗で構成されるリゾートモールだ。イオンでは年間1200万人の集客目標を掲げている。

開業式典には、米軍飛行場の辺 野古移設に関して安倍晋三首相に強く反対の意思を表明するなど、県民の注目を集める翁長雄志知事も来賓として出席。「本県の観光振興に大きく寄与し、万国 津梁の一端を担ってほしい」とあいさつした。万国津梁とは世界の架け橋の意味で、かつて首里城正殿に掲げられていた梵鐘に刻み込まれている銘文に記されて いる言葉だ。沖縄が持つポテンシャルに対する知事の期待感がにじみ出ている。

沖縄経済をめぐるもう一つのビッグニュースは、ユニバーサ ル・スタジオ・ジャパン(USJ)の沖縄進出計画だ。3月18日、USJを運営するユー・エス・ジェイのグレン・ガンベル最高経営責任者が、新たなテーマ パークを沖縄県に建設する方針を明らかにした。ガンベル氏は「映画をテーマにしたパークではない。沖縄に合うものをつくる。あくまで初期計画の段階」など と大阪市内で報道陣に語った。地元では名護市のネオパークオキナワ(名護自然動植物公園)と、その周辺30ヘクタール程度の土地が候補地として有力視さ れ、名護市の隣・本部町にある人気スポット、美ら海水族館と同規模の年間280万人の来場客数の予測まで報じられている。

このほか、台湾 の大手セメントメーカー、嘉新水泥(嘉新セメント)が本島南部の豊見城市に大型ホテルやショッピング施設などの複合型商業施設建設(投資総額400億円) を計画しているとの報道もある。豊見城市は沖縄県のMICE施設(国際会議などを行う施設)の有力候補地で、嘉新セメントはMICE施設建設地決定後に具 体的な開発に乗り出すとしている。国内ばかりか海外企業からも沖縄に熱い視線が注がれている。

●「アジア大交易」の再来を目指す那覇空港

国際物流の点からも沖縄は、再び存在感を示す拠点となりつつある。14世紀から16世紀にかけて、明への朝貢国として高いランクに位置づけられていた琉球 王国は、東アジアにおける対明貿易をほぼ独占した上、東南アジアや日本と朝鮮を結ぶ中継貿易の拠点として繁栄した。この時代は「大交易時代」と呼ばれ、こ こに冒頭の「万国津梁」が登場する。「舟楫をもって万国の津粱となし、異産至宝は十方刹に充満せり」(舟を操って世界の架け橋となり、珍しい宝は国内に充 ち満ちている)といった繁栄ぶりだった。

それは沖縄の地政学的なメリットによるところが大きい。那覇を起点とした同心円の1500キロ メートル圏内には、東京、中国・上海、広州、香港、韓国・ソウル、台湾・台北、フィリピン・マニラといった東アジアの重要な拠点が見事なまでに収まる。中 国・北京はやや離れているが2000キロメートル圏内だ。那覇はアジア物流の拠点となるには打ってつけの都市なのである。そこにいち早く着目して動いたの が全日本空輸(ANA)だった。

「アジアの主要都市から4時間圏内」「24時間離発着可能」――この2つの利点を持つ那覇空港を活用した「沖縄貨物ハブネットワーク」事業を同社は2009年10月にスタートさせた。

現在、国内4空港(千葉・成田国際空港、東京国際空港<羽田空港>、大阪・関西国際空港、愛知・中部国際空港)、海外8空港(韓国・仁川国際空港<ソウ ル>、中国・青島流亭国際空港、上海浦東国際空港、広州白雲国際空港、香港国際空港、台湾桃園国際空港、タイ・スワンナプーム国際空港<バンコク>、シン ガポール・チャンギ国際空港)と那覇を結び、深夜発早朝着の運航ダイヤで、アジア圏へ翌日配送体制を築き上げた。ANAは今年10月には、中国・アモイ高 崎国際空港、フィリピン・ニノイ=アキノ国際空港(マニラ)との路線を新設し、広州は成田線に切り替える。これにより、那覇は国内外13拠点の国際貨物の ハブ空港となるわけだ。

那覇空港全体の14年の国際貨物取扱量は17万8089トンで対前年比約20%増、2年連続の増加となった。 ANAのハブ事業が始まる前の08年の935トンと比べ、190倍に急増している。ちなみに国内トップは成田の約204万トンで、次が関西の約70万ト ン。那覇は中部の16万5722トンを上回り、国内3位の空港となっているのだ。沖縄がアジア大交易の一大拠点となる日は近い。

●ものづくり、観光、エネルギーでさらなる飛躍の可能性

那覇空港の国際ハブ化が進むにつれ、物流関連企業はもちろん、さまざまな分野の企業が沖縄に熱い視線を送るようになってきた。半導体、医療、金型メーカー などが沖縄の地の利に惹かれて生産設備や研究拠点などを置く動きが加速している。ITや金融の特区によるさまざまな支援制度もあってメリットは大きい。

「公 共投資、観光、基地経済への依存度が高かった沖縄経済が、この数年で大きく変貌を遂げようとしています。20年には那覇空港第2滑走路の供用も始まるの で、ますます沖縄熱が高まりそうです。もちろん課題もあります。航空機による輸送は、海運に比べ輸送時間が圧倒的に短い分、コストは数十倍になるケースも あるのです。そうした高コスト体質でも採算の取れる高付加価値産業をいかに誘致できるかが勝負といえるでしょう。観光面でいえば、鉄道をはじめとする陸上 交通のインフラの整備、アジア圏からの旅行客に対応できる言語やソフト能力の強化・拡充が不可欠です。ただ、人口増加率の高さ、地理的な有利さ、豊かな自 然環境など沖縄の持つポテンシャルは極めて大きいため、辺野古問題など政治に左右される側面を県や周辺自治体がどうクリアして、経済の自立、発展に結び付 けていくかに注目が集まっています。官だけではなく民の力を最大限に取り入れながら進めていけば、大きく飛躍する可能性があります」(経済ジャーナリス ト)

エネルギー分野も注目だ。太陽光など再生可能エネルギーを有効活用するためのスマートコミュニティの実証実験が宮古島で行われている ほか、本島でもスマートグリッド(次世代送電網)技術を採り入れ、街ぐるみでの電力自給計画が浮上。原子力発電所がない沖縄で、どのようなエネルギー革命 が起きるのか。

戦後70年間、基地と政治に翻弄され続けてきた沖縄が、新たなステップへと大きく変貌し、発展しようとしている。
(文=編集部)

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