沖縄で「ソフト闇金」暗躍

高い利息で金を貸し、連日集金する手法で社会問題化した日掛け金融が「ソフト闇金」になり暗躍している。低い県民所得や高い失業率を背景にかつて全国最多の380社近くあった県内の登録業者数は、高利が認められなくなった2010年の法改正でゼロになる一方、闇に潜った。危害を加えずに連日、顔を合わせる集金法は、被害者が業者に親近感を覚えるケースが多く表面化しにくい。(小寺陽一郎)
 「融資の件でお電話しています」。県内の50代男性の携帯電話に、見知らぬ男から電話があったのは昨年夏。銀行の駐車場で待ち合わせると20代くらいの男が現れ、3万円を出した。「毎日2千円ずつ30回返してくれればいい」。借りた金の倍額を返す違法な利息だが、結婚式や離島での法事が続いた男性は飛びついた。
毎日待ち合わせ
 毎日、男と近所で待ち合わせ金を返した。勤務するタクシー会社の夜勤明け、男性が寝ている昼間は、返済を求める電話はない。しばらくすると物腰柔らかに「信用する人にしか貸しません。だから日曜日の返済はいいです」。
 男性は「長らく付き合っているから相手を信頼するような、そんな感覚だった」と話す。
 そのうち別の男からも「融資」の電話が鳴った。貸し借りの方法は同じ。返すため、また、借りた。
寝ても起きても
 借入先は10件になり、残高は約30万円、1日の返済額は1万円近くになった。男性の月収は17万円。同居する母親には頼れず、メーターを倒さず客を乗せる違法行為「煙突」もした。「寝ても起きても、お金のことしか考えられない。自分で自分のことを人間じゃないように感じた」
 男性は司法書士に相談。業者の電話には出ないが、電話は今も鳴り、携帯メールには「新規融資」を案内するメールが届いている。
 多重債務問題に詳しい沖縄クレジット・サラ金被害をなくす会の司法書士、上原修さんの事務所には毎年10人前後が闇金の相談に訪れる。上原さんは「闇金の多くは今も日掛け金融の手法を使う。貸し手と借り手に人間関係ができ、大手消費者金融業者より、闇金の返済を優先させる人さえいる」と心配している。
[ことば]
 日掛け金融 零細事業者相手に返済日数の半分以上の日数で業者が出向き集金することなどを条件に、集金の手間がかかるとして年利54・75%(2001年までは109・5%)の高利が特例で認められた貸金業の形。改正貸金業法と出資法が10年6月施行され特例が廃止された。福岡県や熊本県発祥とされ、県内ではピークの2000年に全国最多の378社が登録していたが12年にゼロになった。

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