2015年春、沖縄に完成予定の「イオンモール沖縄ライカム」。東南アジアでNo.1のリゾートモールを目指して建設が進行中だ。
イオンは単なるショッピングモールではない。イオンは街全体を変えてしまう力がある。その力は、地方自治体の力よりも大きいと言っても過言ではない。
例えば、2013年秋にオープンした「イオンモール幕張新都心」。「イオンモール幕張新都心」には、ショッピングゾーンはもちろんのこと、吉本興業を始めとするいくつかの企業がアミューズメント施設を設けている。その他にも、一日かけて過ごせるようなさまざまな施設が用意されているのだ。その様子を見れば、イオンを単なるショッピングモールと呼ぶことが難しいということがわかるはずだ。
■イオンと競合の大きな違い
イオンがイトーヨーカドーや西友など他のショッピングモールやスーパーマーケットと決定的な違いを生み出して来たのは、施設の作り方だけではない。イオンと他の大きな違いは、街を変える力まであるかどうかなのだ。
幕張地区が注目され始めたのは今が初めてではない。幕張地区は東京都心にも近いため、数十年前から期待され続けていたにも関わらず、長い間鳴かず飛ばずの状況を続けていたのだ。イオンはそんな幕張に活気を取り戻させているのだ。
イオンモール幕張新都心近くにあるAPAホテル(旧幕張プリンスホテル)は、幕張地区発展を見込んで増床工事を続けている。そしてイオン周辺の幕張地区の飲食店や販売店なども、軒並み業績を向上させている状況にある。これらを引っ張っているのが、イオンの存在感なのだ。
イオンが街を変えている例をもう一つ紹介したい。
東日本大震災の被災地の一つである石巻。沿岸部はいまだに復旧のメドが立たずに生活している人達が数多くいる。調査データや現地で被災者の方々の話を聞くと、被災当初は出来るだけ元の場所で生活を再開させたいと考えていた人達も、時間とともにその気持ちが薄れている状況だ。
彼らの多くが希望しているのは、内陸部にオープンしたイオンモール石巻周辺だ。今や石巻沿岸部ではなくイオンモール石巻周辺に人々が集まるような状況になっている。とにかく便利な状況を生み出すことで、イオンは石巻の中心になりつつあるのだ。幕張や石巻など地域によってニーズの差はあるものの、イオンはそのニーズをうまく掴み、街自体を変革していける存在感を持つ力がある。
それは現在建設中の「イオンモール沖縄ライカム」にも発揮されることだろう。沖縄は日本有数の観光地だ。そして日本は観光業を将来の主力産業の一つとして位置づけいてる。安倍政権は観光立国を掲げ、2013年には訪日観光客数1000万人を突破した。そして、2020年には訪日観光客数2000万人を目標にしている。日本を代表する観光地である沖縄にも、日本人だけでなく多くの外国人観光客がますます訪れることはほぼ確実だ。
■なぜイオンだけが街を変えられるのか
イオンが他のショッピングモールと異なる理由は、イオンがショッピングモールの枠に捕われなかったことだ。通常のショッピングモールは売上金額を重視するため、「客数」と「客単価」を気にする。簡単に言えば、一日に何人のお客さんが来て、いくら買い物をしてもらったかというものだ。
しかし、イオンは違う。「客数」と「客単価」以上に、「客の滞在時間」を意識している。一日に何人のお客さんが来て、いくら買い物をしたかというだけでなく、そのお客さんが何時間くらい店に滞在したのかということを意識している。客の滞在時間が長くなれば、それだけショッピング以上にお金を使う可能性が高くなる。イオンの店舗面積が他と比べてはるかに大きいのも、イオンに来れば、ショッピングだけでなく、食事から娯楽まですべて完結してしまうという構図を作る目的があるからだ。
実際に「イオンモール石巻」に限らず、地方の場合、高齢者の方々だけでなく、ファミリーや若者まで、イオンに行くことがエンタテイメントになっているという現実もあるのだ。また、このような大規模店舗の開発を進めるために、2013年11月にイオンはリート投資法人を上場させている。
イオンが他のショッピングセンターと異なる理由は明確だ。将来のビジョンを描く力、つまり経営力が強く、そのビジョンを作るために、地域のニーズをはっきりと掴むマーケティング力が強い。既存市場での顧客の奪い合いという狭い視点に捕われすぎない経緯力とマーケティング力の強さがイオンの圧倒的存在感の根本なのだ。