沖縄県が観光収入を過大発表 基地の恩恵少なく見せ、反米に利用か

沖縄県が県民経済計算の参考資料で、観光収入を過大計上していることが3日、分かった。

異なる基準で計算して基地収入と比較し、結果的に「反基地」「脱基地」の県政に沿う形で、観光収入を大きく見せかけていた。県民経済計算は売上高などから経費を除いたいわゆる利益部分を公表するが、同県の観光収入は売上高をそのまま公表。統計上欠陥がある状態で米軍基地反対運動の材料にも利用されている。(大塚昌吾)

沖縄県は翁長雄志知事が講演や記者会見で、観光収入を引用して経済の基地依存の低下を強調し、「沖縄経済の最大の阻害要因は米軍基地」との主張を展開。地元2紙や基地反対派による「沖縄経済が基地に依存しているというのは誤り」とするキャンペーンや、運動の材料になっている。

沖縄県は平成26年度県民経済計算の参考資料で、同統計には表れない「観光収入」(5341億7200万円)と、基地収入である「米軍基地からの要素所得」(1519億8300万円)を公表している。

県民経済計算は本来、売上高や出荷額から中間投入額(原材料費や光熱水費など)を除くルール。基地収入は、米軍雇用者所得と軍用地料などの合計で、もともと経費はかからないため、県民経済計算のルールに沿った数字だ。

一方、観光収入は、県内空港でのサンプル調査などをもとに県内消費額(ツアーも含む交通費、宿泊、飲食費、レジャー施設入場料、おみやげ代など)を推計し、かかった経費を差し引かずに公表しており、数字が大きくなる。

沖縄振興に関わる政府関係者は「基準の異なる数字を比較材料として使うのは、統計上重大な欠陥」と指摘し、政府の沖縄振興策の適切な執行のためにも、早急な改善を求めている。

工業立国だった日本の統計は製造業が中心で、サービス統計は弱体との指摘がある。県民経済計算でも、産業分類で「観光業」、あるいは最終消費支出で「観光」の項目はなく、「観光収入」の定義もない。

沖縄が基地収入と比較している観光収入について、他県は、観光客が県内で落としたお金=「観光消費額」として単独で公表している。統計が弱体だからといって、自らが志向する反基地政策の補強のために都合良く使っていいわけではない。

政府の経済財政諮問会議でも「統計の改善」が問題提起され、各省庁で作業が進んでいる。沖縄県も、観光立県という政策の実現に向け、米ハワイ州観光局なども参考にした正確な統計づくりを目指す必要がある。

【用語解説】県民経済計算 都道府県ごとの1年間の経済活動の状況を把握するための指標で、平成26年度が最新。国民経済計算に準拠し、県内総生産や県民所得の推計のほか、県の経済動向や産業構造を把握し、県の政策に生かす。

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