2001年に亡くなったシンガー・ソングライター、河島英五さん(享年48)の新アルバム「河島英五 セルフ・アンド・カバー」(2枚組)が19日に発売された。本人歌唱の原曲と、そのカバー曲を交互に収録した “音楽業界初”という触れ込みの企画だが、中でも沢田研二の1曲は思い入れたっぷりだ。
アルバムは代表曲「酒と泪と男と女」を萩原健一と中村雅俊のバージョンでそれぞれ収録。加藤登紀子の「生きてりゃいいさ」、ちあきなおみの「あまぐも」、森田公一&トップギャランIIの「時代おくれ」、やしきたかじんの「生まれる前から好きやった」のほか、河島さんの息子、娘も含め参加アーティストは15人にのぼる豪華な顔ぶれ。
そんな中、「いくつかの場面」は、2008年に沢田が東京ドームで開いた「人間60年・ジュリー祭り」コンサートの際、涙ぐみながら歌って話題を呼んだ。その涙は、河島さんへの惜別の思いだけではなかったようだ。制作担当者が明かす。
「アルバムに収録した沢田さんのカバーは河島さんが活躍していた75年の録音ですが、歌唱力のある沢田さんには珍しくすでに感情を抑えきれずに、音程がブレる箇所があります」
歌詞には自分のもとを去っていった人や、ヤジと罵声の中で歌った思い出など、河島さんの自伝的な要素が盛り込まれている。沢田もまたロックと歌謡曲のはざまで苦悶した自身を投影して、歌いこんでいたのだ。
河島さんの元マネジャー、原久尚さんはアルバム解説でこう綴る。
「かつてレッド・ツェッペリン等のフィルムコンサートの前座という経歴を持つ英五氏もよく客席と喧嘩していました。『金返すから帰れ!』と怒鳴ったり、逆に自分が途中で帰ってしまったり、黎明期のフォークやロックはけっこう命懸けだったのです」
歌に歴史あり-。