久しぶりやな。ありがとうな――。まるで顔馴染みの店員のように気さくにしゃべりかける自動販売機が全国に広がっている。ダイドードリンコやキリンビバレッジが展開しているもので、地域によっては方言で話しかけるタイプもある。
新機種「沖縄方言バージョン」が登場
ダイドードリンコが「おしゃべり自販機」を設置したのは2000年。小銭を入れると文字通り、「おはよう」「こんばんは」「いらっしゃい」としゃべるかと思えば、お客さんをもてなすセールストークも忘れない。小銭が足りない時には「投入金額をお確かめください」と注意を促し、購入後は「おつりをお忘れなく」。さらに時季にあわせて、「メリークリスマス」「良いお年を」「あけましておめでとうございます」と声を掛けてくれるのもユニークだ。
「自販機は身近な存在のはずなのに、いわば何も語りかけない受け身の存在でした。そこに着目し、自販機が話しかければ楽しくなるな、と。技術的にも難しいものではありません。お客さんを喜ばせたい思いがあり、意外性を狙いました」
こう話すのは同社の広報担当者。はじめは標準語だけだったのが、03年には関西弁バージョンが設置された。フレンドリーで軽やかな男性の声が親しみやすいと話題になり、06年からはエリア限定版として津軽弁(青森市内)と名古屋弁(名古屋市内)も登場。翌年には博多や広島などにも拡大し、最近も2年ぶりの新機種「沖縄方言バージョン」が導入されたばかりだ。
「おしゃべり自販機」は現在、国内に数十万台が設置されている。標準語と関西弁は全国にあり、「中には方言をランダム設定にして、来るごとに違うしゃべり方をする自販機もあります」と前出の担当者。また、同社のホームページを通じては「自分の地域にもしゃべる自販機が欲しい」といった声が集まっているそうだ。次に設置予定の地域については、「現在検討中です」とのことだった。
アイデアの発端は「新潟弁をなんとか残せないか」
一方、キリンビバレッジも同様に、新潟エリアと愛知県名古屋エリアでしゃべる自販機を設置している。
「今すぐ使える新潟弁 自動販売機」は04年に設置された。「使われなくなりつつある新潟弁をなんとか残せないか」というアイデアが発端となり、BSN新潟放送で人気のラジオ番組「今すぐ使える新潟弁講座」とタイアップして実現。自販機は、近藤丈靖アナウンサーが声で演じる番組キャラクター「山本さん」が吹き込んだ12種類のメッセージがランダムで流れる仕掛けだ。県内には100台程度が設置され、地元の人をはじめ観光客が「面白い」ととびついている。
好評を受けて10年2月に登場したのが、「名古屋ことば自販機」だ。名古屋開府400年を記念して企画されたもので、市内には17台が設置されている。しかも、声の主は大部分が河村たかし名古屋市長。ジュースを買うたびに、「どえらけにゃぁうれしいぎゃぁ」「まーいっぺんきてちょーよ」などと歓迎してくれるのが、親しみやすいと人気がある。
ちなみに、動画投稿サイト「ユーチューブ」では、実際に自販機がしゃべる様子を撮影した動画が多数アップされており、多いものでは10万回近く再生されている。コメント欄には「自分が、愛知人だというのに名古屋弁で笑ってしまった」「おもわず会話しそうになりました」「関西弁w 関西人やったかて共通語分かるやんか」「福岡人だけどちょっとこれは濃いな。ばりばりの博多っ子しか話さないね」などと書き込まれていた。<モノウォッチ>