■経産省が成長戦略骨子案
経済産業省は18日、諸外国に比べて大幅に高い法人実効税率を現在の40.7%から国際水準並みの25~30%へ引き下げることなどを柱とする成長戦略「産業構造ビジョン」の骨子案を発表した。ライバルの中国(25.0%)や韓国(24.2%)の企業に比べ重い税負担を軽減し、日本企業の競争力を高める。
6月にまとめる政府の新成長戦略へ盛り込んだうえで、来年度の税制改正でまず5%の引き下げを要望する方針。ただ、財政悪化が進む中、財務省との調整が難航するのは必至だ。
重い税負担は、企業の競争力低下だけでなく、拠点の海外移転による空洞化を加速し、外国企業の対日投資も阻害すると指摘されている。
骨子案では、1995年から2007年にかけて税率を37.7%から28.7%まで引き下げた欧州連合(EU)で、国内総生産(GDP)の名目値に占める法人税収の割合が2.2%から3.2%へと逆に増えたケースを例示。税負担の軽減で企業の新規事業などが活発化し経済成長につながると提言した。
具体的には、5%引き下げた場合、直後に年1兆円の税収減が見込まれるが、3年間の累積では企業の設備投資の活性化などで経済成長が押し上げられ、2兆1千億円の税収増が見込めると試算した。
民主党も法人税率の引き下げの必要性に理解を示しているが、09年度の法人税収は景気悪化の影響で前年度からほぼ半分に落ち込んでいる。消費税率の引き上げなどによる抜本税制改正に先行して法人税を引き下げるのは困難との見方は多い。大企業優遇との批判から連立の社民党の理解を得られるかも不透明だ。
成長戦略では、このほか韓国サムスン電子など新興国企業へ対抗するため、国内産業の再編を促進する方針も示した。M&A(企業の合併・買収)の手続きの簡素化や官民ファンド「産業革新機構」を活用した再編資金の供給、再就職や職業訓練の支援強化などを通じて、民間主導で産業構造を転換したいとしている。