なぜ日本ではスーツ姿の男性が泥酔し、路上で寝込んでいるのだろう。
そんな疑問から、コスタリカ出身の写真家、アレグラ・パチェコさん(36)が、サラリーマンを追ったドキュメンタリー映画を完成させた。
東京を最初に訪れたのは2014年。路上で眠り込んでいるサラリーマンの姿に驚いた。
「酒を飲まずにいられないのは、仕事のストレスが原因なのか。企業による殺人事件のようだ」とパチェコさんは思った。
路上で寝込む人を見つけると、白いチョークの線で囲み、現場検証風のアート写真を撮った。
そしてサラリーマンを通じて働き方を考える映画を作りたいと思い立った。日本と米国などを行き来しながら、5年かけて100人ほどに取材をした。
ほろ酔い気味のサラリーマンたちは、冗舌だった。「我々は会社の奴隷だ」とおどけながらも、「切り替えが難しい。家と仕事場にいる時、どちらが素の自分なのか、わからなくなる」といった言葉を漏らした。
昨年完成した映画「サラリーマン」はこれまで欧米の映画祭などで上映された。
パチェコさんはいま、日本での上映の機会を探っている。「人生の大半を仕事に費やす私たちにとって、働く意味を考えるのはとても大事。日本のみなさんと意見を交わしたい」(伊藤恵里奈)