津波で全壊…料理店「あら浜」古里で再出発

東日本大震災の津波で宮城県亘理町荒浜地区にあった店舗が全壊した料理店「あら浜」が、来年4月下旬にも現地で再オープンする。被災後に移った仙台市中心部の店を維持しつつの古里での再出発。「荒浜に戻る」。一家の決意が5年の月日を経てようやく実る。
町道荒浜大通り線沿いの店舗跡で16日、店主一家が地鎮祭を執り行い、新店舗の工事に着手した。店主の塚部久芳さん(64)は「店名の由来である荒浜に戻りたい一心だった」と話し、再開への一歩を踏んだ喜びを家族と分かち合った。
震災前の店は1993年に開店。荒浜漁港で水揚げされた海産物を使った郷土料理はらこめしやほっきめしなどを提供し、地域住民や観光客の人気を集めた。
震災で一家は無事だったが、津波で木造平屋の店舗が冠水して取り壊した。被災から約10カ月後、青葉区本町に店を構え、営業を再開。塚部さんは妻慶子さん(63)と町内の仮設住宅から店に通い、次男慶人さん(34)らと腕を振るった。
古里に戻る思いは変わらなかった。店舗跡に唯一残った店の看板には「この地に再開めざして!」と大書したボードを掲げ、決意を表した。地元住民の「早く戻ってほしい」と願う声にも応えたかった。国のグループ化補助金を活用して現地再建することにした。
新店舗は以前と同じ規模の約240平方メートルで50席を予定。塚部さん夫妻らが切り盛りする。車椅子に対応した空間を設けるなど、地元の高齢者が訪れやすい店を目指す。仙台の店は引き続き慶人さんが担う。
塚部さんは「郷土料理は地元で食べてこその良さもある。住民と仙台での常連客らが気軽に集える店にしたい」と意気込む。慶人さんは「亘理に足を運んでもらい、復興の一助になればうれしい」と願う。

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