東日本大震災の津波で宮城県石巻市谷川(やがわ)浜から流失、漂流し約300キロ離れた茨城県大洗町沖で回収された養殖用の漁具が、谷川浜の養殖漁業者の元に戻った。
養殖業の再生を支援しようと、漁具を保管していた大洗町が運搬費用を負担した。約1000個の浮きだるを積んだトラック3台が9日午後、谷川浜に到着し、関係者約15人が出迎えた。
大洗町によると、大洗港に入港するフェリーが7月下旬、大洗約20キロ沖の海上で漂流している大量の浮きだるやロープを発見。茨城海上保安部がクレーン船で回収した。
町が茨城県を通して岩手、宮城両県に照会したところ、たるに記されていた屋号などから宮城県漁協谷川支所の組合員がホヤやホタテの養殖用に使っていたものであることが判明した。
谷川支所はホヤやホタテの養殖が盛んで、種ホヤは全国一の生産量を誇った。津波で流失した浮きだる約2万個のうち、回収できたのは8000個だけだった。
谷川支所の渥美義悦運営委員長(69)は「資材が不足する中、本当に励みになる。戻ってきた漁具を使い、日本一のホヤを復活させたい」と語った。
水産業が盛んな大洗町は東日本大震災の津波で漁港や加工場などに被害が発生した。漁具を届けた町生活環境課の飛田顕吾主任(37)は「同じ水産のまちとして、一日も早い復興を願っている」と話した。