東日本大震災の津波で流失した宮城県気仙沼市魚町の神明崎のえびす像が、8年以上たって震災前にあった場所のすぐそばの海底で見つかった。「おえびすさん」として親しまれ、かつて漁業者が大漁を願って手を合わせた地元のシンボル。所在が判明し、港町に喜びが広がった。
像があったのは来年3月完成予定の浮見堂や遊歩道の工事現場付近。台座から南西約10メートルの岸壁近くの海底(水深約2メートル)で11月25日、作業員があおむけの状態で発見した。
右手に持っていた釣りざおは折れていたが、顔から腰の部分までは姿が確認された。市は年明け早々にも像を引き揚げる。
像は1988年に建てられた。32年に大漁祈願のために建てられた初代の像が太平洋戦争の激化に伴い軍に金属として回収されたため、神明崎にある五十鈴神社の氏子らが協力して復活させた。
高さは約1.5メートル。珍しい立ち姿でタイを釣り上げている。津波で流され、漁業関係者がダイバーの協力を得て海中を捜したが見つからなかった。2017年夏に商工、漁業関係者らが「3代目えびす像建立委員会」を設立。来春にも3代目がお披露目される直前、「2代目」が姿を現した。
建立委員会は予定通り3代目を元の位置に設置した上で、発見された像を五十鈴神社に奉納する予定。3代目は高さ約1.7メートルで、気仙沼が水揚げ日本一を誇るカツオを釣り上げている。
建立委員会の委員長を務める気仙沼商工会議所の臼井賢志名誉会頭(77)は「沖に流されて二度と見つからないと思っていたので驚いた。大漁祈願の神様が戻ってきてくれたことは気仙沼にとって大変喜ばしいこと。地元のシンボルとして大事に扱いたい」と話した。