津波にのまれたドイツ人一家救助 命の恩人見つかる

 宮城県多賀城市内で東日本大震災の津波にのまれたドイツ人一家が、救助してくれた人を探しているとの記事が17日付河北新報朝刊に掲載され、この人は東松島市の自営業庄司武志さん(38)と分かった。自らも車ごと津波に流されたが、冷静な判断と機転で一家を救った。庄司さんは「当然のことをしただけ」と話している。
 ドイツ人一家はユルゲン・シュピールベルクさん(72)、妻(67)、娘(33)の3人。3月11日の震災当日は国内を旅行中で、多賀城市内で乗っていたタクシーごと津波に巻き込まれた。
 庄司さんはあの日、仕事先の仙台市内で地震に遭った。自宅に帰ろうと、多賀城市内の国道45号を運転中に津波に巻き込まれた。
 幸い、トラックと電柱に挟まれて車が停止。近くのアパートに避難しようとした時、津波に流されてアパートのフェンスにしがみつく3人を見付けた。
 「落ち着いて、落ち着いて」と自分に言い聞かせた。ももまで水に漬かりながら3人をフェンスから敷地内に引き上げ、窓からアパート1階に押し込んだ。
 アパート室内も浸水し、住人の老夫婦が震えていた。低体温症を防ぐため、夫婦をテレビ台など家具の上に上がらせ、3人を台所の流しの上に座らせた。自分は水に漬かりながら、布団や衣類を運び、みんなに渡した。
 やがて夜になった。周辺には車の屋根や電柱の上で、救助を待つ人々もいた。庄司さんは3人や夫婦に目を配りながら、室内にあった懐中電灯で車や電柱に光を当て、「大丈夫か」「頑張れ」と励まし続けた。
 救助が来たのは翌12日の早朝。避難所に着いた庄司さんはシュピールベルクさんたちと抱き合い、別れを告げた。庄司さんは「ドイツ語で必死に何か話していた。お礼を言っていたのだと思う」と振り返る。
 河北新報朝刊で、帰国したシュピールベルクさんが命の恩人の行方を探していることを知った。庄司さんは「無事に帰国できて良かった。今になって鳥肌が立つこともあるけれど、あの時は目の前のことしか考えていなかった」と話している。

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