津波に耐えたハマナデシコ、「絶滅」発表覆す

 東日本大震災の津波に流され、岩手県内では絶滅したとされていた野生の希少植物ハマナデシコを、自生地の北限とされる同県陸前高田市で、被災者の夫婦が発見した。
 昨年の調査をもとに「絶滅」と発表していた同県環境保健研究センターは「津波の致命的なダメージを地下で免れた株が息を吹き返したのだろう。大きな発見で、発表が覆ったこともうれしい」としている。
 ハマナデシコは海岸の砂地に生える高さ20~50センチの多年草。本州や九州、沖縄に分布し、7~8月に薄紫色の小さな花を咲かせる。同市の海岸近くの土手が野生種の北限とされ、「野生での存続が困難」として同県のレッドデータブックにも記載されている。
 震災以前は海岸から30メートルほどの砂地の自生地に10本前後生えていた。しかし、昨年7~8月、同センターが現地調査した際には確認できず、今年6月、薬用植物栽培研究会の会報誌に「本県では野生絶滅が明らかになった」との論文を発表していた。
 自生している株を発見したのは、震災で陸前高田市の自宅を流され、釜石市の仮設住宅で暮らす元県職員菊池隆さん(60)と妻みつよさん(64)。
 夫妻は10年前、自宅近くの自生地で種を採取し、庭で育てていた。21日に自宅跡地に行った後、自生地を訪れたところ、電柱が倒れ、がれきが散乱する砂利の中に3株を見つけた。葉は青々と光沢があり、1株は高さ30センチほどに育ち、2輪の花を咲かせていた。

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