東日本大震災の被災地を含め、昨年までに最大級の津波の浸水想定を公表した青森、岩手、宮城、福島各県の沿岸59市町村の4割で、被害の恐れが高まった指定緊急避難場所や指定避難所の見直し作業が本年度末までに完了しないことが、河北新報社が実施したアンケートで分かった。浸水域が広がり、避難先の確保に難航するケースもある。
広域浸水で確保難航の恐れ
市町村の見直し状況はグラフ(上)の通り。「完了」は見直す必要がなかった場合も含む。「作業中」と「未着手」を合わせた未完了は、浸水想定の公表が昨年5月と最も遅かった宮城が60・0%で、青森36・4%、岩手33・3%、福島40・0%。
主な理由は地域防災計画などの計画修正に合わせたり、地域と協議中だったりするため。陸前高田市は復興事業の造成工事で土地の形状が大きく変わり、地元の自主防災組織などに適地を確認している。
青森県と岩手県北の太平洋側の一部には、代替となる安全な避難先の用意が進んでいない自治体もある。
岩手県田野畑村は、明戸地区で唯一の避難場所と避難所がいずれも浸水域に入った。村総務課の担当者は「集落の奥まで津波が迫り、さらに山側に向かえば孤立の心配がある。どこに逃げればいいのか。公共施設もほかにない」とこぼす。
浸水面積が1・4倍に拡大する八戸市は、避難者数が大幅に膨らみ11万4000人と想定されている。
ところが、全136避難所の収容可能人数は計約7万5500人で、4万人近くがあふれかねない。市防災危機管理課の担当者は「市内で確保できなければ、広域避難も協議していく必要がある」と説明する。
浸水域外への避難が間に合わない人々を受け入れる避難ビルや避難タワーの見直し状況はグラフ(下)の通り。既に施設があるか新設を検討する22市町のうち、完了は半数に満たない。
ハザードマップや津波避難計画の作成に当たっての住民ワークショップの開催は、予定も含めて45・8%にとどまる。住民が地域のリスクや課題を主体的に考え、備える機会は浸透し切れていない。
[調査の方法]対象は政府の日本海溝・千島海溝沿い巨大地震の津波避難対策特別強化地域に指定された青森県22市町村、岩手県12市町村、宮城県15市町、福島県10市町。1月上旬、メールで津波避難に関するアンケートフォームを送信。2月上旬までに全59市町村の担当者から回答を得た。