せんだい3・11メモリアル交流館(仙台市若林区)は東日本大震災の発生から10年を節目に、津波被害を受けた市沿岸部を紹介するハンドブック「海辺のふるさと」を発行し、館内で販売している。地形的特徴や歴史、暮らしの変遷、今の見どころなどを地域別に解説し、被災地を訪ね歩く際の必需品にしてもらう。
ハンドブックは縦24センチ、横18センチで全80ページ。宮城野区中野、蒲生、岡田、新浜地区を紹介する高砂編、若林区荒井、荒浜地区の七郷編、同区井土、藤塚、種次地区などの六郷編のほか、名取市閖上地区を含めた貞山堀編の4部で構成する。
高砂編の蒲生地区は江戸期の絵図、明治期の地図と震災前後の航空写真2枚を並べて掲載し、昔は大きく蛇行していた七北田川河口の移り変わりを示した。
六郷編は種次地区の東西に一つずつある石碑「雷神碑」の謎に迫った。筆跡や石材、建立年月日が同じため、地区に広がる水田を挟むように建て、豊作を願ったのだろうと解説する。
沿岸部に今も残る約2000年前の大津波の痕跡、水田地帯に震災前まであった屋敷林「居久根(いぐね)」が広がる風景などをテーマに七つのコラムも掲載した。
執筆した郷土史研究家の菅野正道さん(56)は「歴史好きはもちろん、沿岸地域を詳しく知らない人に読んでほしい」と話した。
見どころを案内する「ここを見にいこう!」のコーナーでは、津波で被災し閉校した3小学校の跡地も取り上げた。中野小(宮城野区)は「なかの伝承の丘」、荒浜小(若林区)は震災遺構、東六郷小(同)は「コミュニティ広場」になった。
交流館職員の三條望さん(35)は「沿岸部は被災地としてひとくくりにされがちだが、地域ごとに特徴や魅力がある。ハンドブックを入り口にして、現地を訪ねてほしい」と語った。
ハンドブックは震災発生10年の3月11日に発行し、5月15日に発売した。1冊800円。500部作製。江戸期の絵図、明治期の地図、2002年と21年の地図を印刷した「行ってみようマップ」(A2判四つ折り)が付録として付く。
連絡先は交流館022(390)9022。