津波警戒、即時に 東北の自治体、ツイッター導入

 東日本大震災を機に、東北で短文投稿サイト「ツイッター」を活用して気象・防災情報を発信する自治体が増えている。公式アカウントは47(9月末現在)を数え、このうち24は防災情報を扱う。津波注意報の注意喚起に使われるなど、即時性の高い情報発信ツールとして存在感が高まる。
<アカウント3倍>
 経済産業省などによると、東北の自治体の開設数は震災前の20から大幅に増えた。県別では青森11、岩手9、秋田、山形が各8、宮城7、福島4。
 防災情報を伝えるアカウントは震災前の9から3倍近くに伸びた。青森、岩手、秋田が各5、宮城4、福島3、山形2で地震や風水害、空間放射線量の速報を発信する。
 防災情報のみを扱うケースもある。気仙沼市危機管理課は高潮や地震、火災の情報に加え、大島航路など交通への影響も発信。宮城県の大和町防災たいわ広報は、避難訓練の実施日など町の防災無線の放送内容をそのまま流している。
 「震災前は自治体のキャラクターが催し情報などをつぶやく程度で、広がりを欠いていた」と経産省の担当者。震災発生後しばらく、情報インフラの損傷や停電で情報が届きにくかった。携帯電話やスマートフォン(多機能携帯電話)で利用できるため、いざという時の情報発信手段として自治体側に活用意識が広がったという。
<普段使い目指す>
 最近の活用例として注目を集めたのは、ことし8月31日のフィリピン沖地震。気象庁が東北から九州の太平洋沿岸に津波注意報を出すと、八戸市、岩手県、大船渡市、陸前高田市、気仙沼市はすぐにツイッターで警戒を呼び掛けた。
 注意報は岩手県以南に出されたが、八戸市は「津波に県境は関係ありません。八戸市沿岸でも念のためご注意ください」と2万2000人の読者に伝えた。津波注意報をかみ砕いて用心を呼び掛けた好例だ。
 八戸市広報統計課の松橋洋主幹は「何かあった時に見てもらえるよう日々情報発信している。読者に普段使いしてもらうことが大切」と語る。
<「負担増」の声も>
 一方で情報発信が半年ないアカウントもあり、自治体の担当者は「防災無線、ホームページ、防災メールの対応もあって、作業量が追いつかない」と課題を口にする。
 震災時、気仙沼市の担当者は命の危険を感じながらツイッターで避難を呼び掛け、被害状況を全国に発信する重要な役割を果たした。上司の決裁を経なくても公務員の良識の範囲で即座に情報発信した事例だった。
 自治体のツイッター活用に詳しい専門家には「試行錯誤しながら住民の命を守ることにつなげてほしい」と期待する声が高まっている。
[メモ] 経済産業省によると、全国の地方自治体の公式アカウント(教育機関を除く)は9月末現在で621。震災前は100前後だったが、昨年6月末には216と倍増し、その後も右肩上がりに増えている。

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