津波避難の合言葉「てんでんこ」も紹介 「災害伝承」の解説書発刊

東北大災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授が監修した書籍「災害伝承の大研究 命を守るために、どう伝える?」がPHP研究所から発行された。東日本大震災をはじめ、古今東西の災害伝承の事例、災害を語り継ぐ意義や課題を、子どもから大人まで学べる。

東日本大震災をはじめ、過去の自然災害を伝える取り組みと意義を分かりやすく解説した「災害伝承の大研究」

 本は地震、津波、噴火、台風といった自然災害に見舞われてきた日本の歴史や、過去の災害から得た知恵と教訓を未来に伝え、備えに生かす取り組み、伝承の在り方を考える項目などで構成。災害伝承に関するクイズも盛り込んだ。
 登場する災害伝承の方法は、石碑、風習、地名、民話、言い伝え、災害遺構、語り部、伝承施設、デジタルアーカイブなど。言い伝えでは三陸地方に伝わる津波避難の合言葉「てんでんこ」と、震災で釜石市の小中学生が教えを実践して命を守ったことを紹介した。
 遺構は災害の恐ろしさを直感的に伝える半面、遺族への配慮や維持費用といった課題があることを解説。具体的な遺構の例として、1991年に起きた長崎県の雲仙普賢岳噴火の火砕流で焼けた小学校や、95年の阪神大震災で現れた兵庫県淡路市の断層を挙げた。
 語り部にも焦点を当てた。大川伝承の会共同代表で、児童ら84人が津波の犠牲になった石巻市大川小で6年の次女みずほさん=当時(12)=を亡くした佐藤敏郎さんの活動や願いを掲載。気仙沼市の東日本大震災遺構・伝承館で語り部に取り組む階上中の生徒も取り上げた。佐藤准教授は「災害伝承には、自然と共に生きるための命を守る知恵がたくさんある。この本を入り口に関心のあることや自分の地域のことなどについて、自主的な調べ学習をしてほしい」と呼び掛けている。
 A4変型判56ページのカラー刷り、3520円。連絡先はPHP研究所03(3520)9630。

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