活性化?渋滞増? 東北7路線でも高速無料化実験スタート

 高速道路無料化の社会実験は28日、八戸道など東北の7路線でも始まった。対象区間では通行量が増え、利用者も好意的に受け止めたようだったが、東北道など幹線は従来通りで、「観光など地域活性化への効果は限定的」との声が大半だった。
 東日本高速道路東北支社によると、通行はスムーズで、無料化区間で渋滞はなかった。だが、現金利用者が通行券を取らずに料金所に進入するなどのトラブルが、東北の対象区間で計200件以上あったという。
 観光への影響について、東北6県と新潟県の官民でつくる東北観光推進機構は「東北観光全体に与える影響は限定的」と推測。主要区間への無料化拡大を注視し、「実現すれば、県境をまたぐ中距離の観光需要の開拓につながる」と完全実施に期待した。
 他の交通機関は危機感を強める。山形道の無料化区間と重なる高速バス路線を抱える山交バス(山形市)は「休日は渋滞でダイヤが遅れる恐れがある。利用客の減少も予想され、影響を注視したい」と話した。
◎山形道/関東ナンバーの車も/SA「週末に期待」
 山形道の山形北―西川間を実際に走ってみると、通行量は普段よりやや多めで、宮城、秋田、福島のほか関東ナンバーの車が目立った。
 寒河江市の寒河江サービスエリア(SA)での反応は冷静な声が多かった。家族3人で酒田市の実家に向かっていた山形市の会社員久松史明さん(27)は「やはり一般道より速い。無料化には賛成。でも、国道を使うだけで十分のような気もする」と話した。
 「乗用車が増えた」と言うのは横浜市のトラック運転手後藤清治さん(55)。「無料化は会社にはありがたいけど、夏休みや正月に通行量が増え、渋滞しないか心配」と複雑な様子だった。
 寒河江SAの工藤好志支配人は「問題は週末。どれくらい人が来るかは予想もつかないが、山形の観光活性化につながってほしい」と期待した。
 一方、交通量の減少が懸念された鶴岡市の国道112号。沿道にある直売所「産直あぐり」の安野恒治店長は「通行量も客数もそう変わらない。観光客が増えれば来店者も増える。無料化の影響は心配していない」と話していた。(山形総局・浦響子)
◎八戸道/温泉やショッピング/「区間短い」不満も
 下田百石・八戸―安代ジャンクション(JCT)間が無料の八戸道。安代JCTを過ぎて東北道に入ると有料になるため、八戸料金所(八戸市)では東日本高速道路の従業員が「手前の浄法寺(二戸市)で降りないと無料になりません」などと呼び掛けた。
 その浄法寺。八戸道を降りてきた八戸市の会社員大館絵美子さん(31)は「八幡平市の温泉に向かう途中。安代(八幡平市)まで無料にしてほしかった」と不満そうだった。
 「通行量はまばら」というのが走った印象だ。折爪SA(岩手県軽米町)では、八戸市のトラック運転手熊谷兼三さん(45)が「いつもと変わらない。無料区間が短く、メリットを感じないのでは」と解説した。
 一方、「無料と聞いて買い物に来た」と言うのは二戸市の主婦佐藤美弥子さん(47)。下田百石(青森県おいらせ町)近くのショッピングモールを訪れ、「盛岡より八戸の方に行きやすくなった」と話していた。
 八戸観光コンベンション協会の大野晴治専務理事は「無料区間で結ばれる岩手県北は生活圏が一体化している。より遠方から誘客できなければ、宿泊観光につながらない。無料化の効果は、まだ不透明だ」と話した。(八戸支局・馬場崇)

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