仙台市を中心に県内で起業の動きが活発化している。市産業振興事業団(青葉区)が応じた創業相談は4~8月の5カ月間で407件に上り、既に前年度の年間377件を突破。県内金融機関の融資利用も着実に増えている。東日本大震災を機に起業志向が高まり、支援体制の整備が進んだことが要因とみられる。
創業相談は、青葉区のアエルにある事業団内に1月に開設された市起業支援センター「アシ☆スタ」が担当。8月までに受けた相談は、前年同期(109件)を大きく上回り3.7倍となった。
女性からの相談が多いのが特徴だ。4~6月のわずか3カ月間で前年度の132件を超え、8月末で206件に達した。これに対応するため、センターは急きょ体制を拡充。8月から週末と平日夜の受け付けを始め、女性専用の日も設けた。
起業の基礎知識を学ぶ起業家セミナーの注目度も上がっている。事業団が6月に開いたセミナーには、昨年の約3倍に当たる171人が参加。市の起業家支援資金の利用も増え、4~8月は前年同期の16件から33件に倍増した。
事業団でアシ☆スタ担当の赤羽優さんは「起業の芽を育てる初期から、資金調達や販路確保まで段階に応じた支援に取り組んでいる。地域一体となった支援体制を構築したい」と力を込める。
ことし1月には、事業団と仙台商工会議所、日本政策金融公庫などによる「せんだい創業支援ネットワーク」が発足。関係機関の連携で、起業家志望者を支える環境が整った。
日本公庫によると、起業前か創業後1年以内を対象にした県内の融資件数は、4~6月の第1四半期で162件。前年同期に比べ34件増えた。
公庫仙台支店が4月に新設した「東北ビジネスサポートプラザ」の藤井辰紀所長は、「景気回復傾向や支援策の拡充で起業が盛んになってきた。多様な働き方の受け皿ができ、地域経済の活性化に果たす役割は大きい」と今後の広がりに期待する。