派遣争うSONY、Apple、MS コンテンツ配信に活路 戦場はスマートテレビ

■米でソニー参戦か
 世界のIT(情報技術)業界や家電業界が、インターネットサービスと一体化した「スマートテレビ」の市場をにらんだ覇権争いを激化させている。11月15日付米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の電子版は、ソニーが米国でテレビ番組をインターネット配信するサービスを検討していると報じた。
 「スマートテレビ」をめぐっては既に米アップルが「とても使いやすい(スマート)テレビ」(共同創業者で10月に56歳で死去したスティーブ・ジョブズ氏)の開発に着手。米マイクロソフトも自社ビデオゲーム機「Xbox360」向けに近くテレビ番組を配信する予定で、市場は早くも激しいシェア争いを予感させている。
 WSJによると、ソニーは家庭用ゲーム機「プレイステーション3」やテレビ受像機、ブルーレイディスク再生機といった自社製品にネット経由での番組配信を検討。米最大のケーブルテレビ局、コムキャストが経営権を持つNBCユニバーサルや、ネイチャー系番組で知られるディスカバリー・コミュニケーション、ルパート・マードック氏(80)率いる巨大メディア複合企業、ニューズ・コーポレーションなどに配信用の番組供給を打診しているという。
 背景には、韓国大手電機メーカーのサムスン電子などによるテレビ受像機の低価格戦略がある。ソニーなど日米欧のメーカーは大画面液晶テレビなど高付加価値路線で差別化を図ってきたが限界があり、コンテンツの配信と組み合わせることで新たな価値を提案していく考えだ。
 ソニーは「スマートテレビ」でテレビ受像機から番組までを一括(いっかつ)供給し、インターネット経由のコンテンツ配信によって番組を好きなときに好きな場所で視聴できるなどの利便性をアピール。顧客を囲い込み、テレビ事業に活路を見いだすねらい。
 ■利用料金がカギ
 ソニーが「スマートテレビ」に参入した場合、米国では既存のケーブルテレビ業界が打撃を受ける可能性がある。
 米調査会社NPDグループによると、北米でのプレステ3の販売台数は1810万台で、コムキャストの契約者数2204万人に迫る勢い。ソニーが既存のケーブルテレビ局より有利な利用料金を設定できるかどうかがポイントとなってくるが、既存のプレステユーザーが「スマートテレビ」を選べばケーブルテレビ業界にとって死活問題だ。
 ■既得権脅かす
 米アップルが開発中の「スマートテレビ」は、スマートフォン(高機能携帯電話)の「iPhone(アイフォーン)」やタブレット型携帯端末「iPad(アイパッド)」といった自社製品と無線LANネットワークで連携し、テレビ番組や映画、ネットを存分に楽しめるとみられる。
 先に発売したiPhone4S搭載の音声認識システム「Siri(シリ)」をリモコン代わりに使うとも噂されている。実現した場合、視聴者の選択を多岐に広げる音声認識のリモコンの登場によってチャンネルや放送局にとらわれないコンテンツの選択が簡単にできるようになるため、既存のテレビ局の既得権を脅かす存在になるのは間違いない。
 とはいえ、「スマートテレビ」への番組配信事業に問題がないわけではない。WSJは「スポーツイベントなどをネットで配信・放映するための権利問題など、今後、テレビ番組のネット配信にはさまざまな問題が持ち上がるだろう」との米メディア業界の大物の声を伝えている。
 (岡田敏一/SANKEI EXPRESS)

タイトルとURLをコピーしました