流通・食品 猛暑が販売押し上げ 「男の日傘」「火使わぬ食材」好調

8月後半に入っても続く猛暑が、流通各社や大手飲料メーカーなどの売り上げを押し上げている。主婦らは食事の支度や買い物の負担を軽くしようと、ネットスーパーや「火を使わない食材」の活用に走り、百貨店の日傘売り場は女性に加え外回りのビジネスマンなどで活況だ。気象庁の来月16日までの「1カ月予報」では平年より高い気温が見込まれ、各業界はしばらく“残暑需要”で潤いそうだ。
 「客層が明らかに広がった。男性も少なくない」と笑いが止まらないのは大丸東京店(東京都千代田区)の季節商品コーナーの担当者。日傘の販売が好調で、今月19日までの売り上げが前年比67%伸びた。例年なら7月のセール期間中が「売り時」だが、今夏は「8月に『第2の山』が訪れた」(同)。以前は年配者中心だった購買層が、若いOLや女子高生、さらにはビジネスマンまで顕著に広がったという。
 家電量販店では、省エネ性能の高いエアコンや新型扇風機の販売が引き続き好調に推移。牽引(けんいん)役となっているのは、例年ではあまり見られない「8月の買い替え客」だ。
 ビックカメラの1~18日のエアコン販売額は前年比5割増を記録した。「エアコンを動かす時間が長くなり、電気代を気にして、省エネ型に買い替える人が多い」と担当者は分析する。さらに、モーターや羽根の形を改良したDC(直流)扇風機は「一般的な製品より高いが、11日までの売上高は約3倍」(同)と絶好調だ。
 食品業界では、火を使わず調理できる食品の人気が高い。水でほぐしてすぐに食べられるシマダヤ(東京都渋谷区)の「流水麺」は、8月に入って売り上げの勢いが加速し25%増で推移。
 アイスクリーム類では「あずきバー」の井村屋(津市)が3年前に記録した年間最高売り上げの2億5800万本を上回るペース。森永乳業は8月中旬までにアイス売上高を約4割伸ばした。
 「お盆期間中も受注が止まらなかった」のはアサヒビール。「スーパードライ」などビール類の出荷数が今月中旬に約20%増えた。サッポロビールもお盆の間に「エビス」の出荷数を40%積み増し、キリンビールやサントリー酒類はすでに増産体制を整えている。
 流通最大手イオンでは、今月第3週までのネットスーパーの注文額が2割増えているにもかかわらず、店舗の客足は減っていないという“珍事”が起きている。「暑い中を持ち歩きたくない冷凍食品や飲料などの重量物はネットで買いだめする一方、生鮮品などは涼みがてら店舗で買うという『生活の知恵』が定着してきた」(広報担当者)ようだ。
 猛暑で沸く流通・食品業界だが、一方で「『暑さ寒さも彼岸まで』という通り、来月半ばごろには『寒暖の差』がほしい」(日本百貨店協会)との声も上がる。各社は残暑の行方をにらみつつ、秋物商品を投入するタイミングなどを計っている。

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