海に潜り漁港再生を支援 気仙沼に移住のダイバー夫妻

東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県気仙沼市で、ダイビング歴40年以上というベテラン潜水士が漁港の再生に奔走している。震災直後、静岡県沼津市から駆け付け、ボランティアでがれき撤去などを続けてきた魚山倫生(みちお)さん(56)。同市唐桑町に昨年移り住み「残りのダイバー人生を東北の復興にささげたい」と奮闘する。
 がれき撤去や漁具の補修・回収、漁場調査など魚山さんの仕事は多岐にわたる。水深20~30メートル潜って、引き揚げ用のロープをがれきに結び付けたり、海底で複雑に絡み合ったロープや網を切断したり。根気強さと慎重さが求められる。生命の危険とも背中合わせだ。
 がれきの海では、工作船や大型クレーンが入っていけない場所も多い。「諦めるしかないと思っていた人たちから感謝されると仕事への誇りを感じる」と魚山さん。
 唐桑半島の付け根にある鮪立(しびたち)漁港では先日、妻の明子さん(48)のアシストで27メートルの深さまで潜り、カキ養殖棚を点検した。「東北の海は冷たいので作業が大変」と気遣う明子さんの言葉に、魚山さんは黙ってうなずく。
 巨大津波で海底の地形が変化している上に、海水の透明度が落ち1メートル先が見えないこともよくある。「地元の漁師でも海の中は分からなくなっている。俺のダイバーとしての長年の勘が頼りにされている」と胸を張る。
 「作業によっては報酬を受け取るが、もうける気はない。出稼ぎではないのだから」。長い年月がかかる東北の復興に、腰を据えて挑む覚悟だ。「それぞれの浜で、若いダイバーを育成しなくてはならない。自分の潜水技術を伝えていくことが本当の復興支援となる」

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