東北の年末年始の旅行商戦が活況だ。仙台市内の旅行各社によると、予約は好調だった前年度の勢いを保ち、海外、国内ともに東日本大震災前を3~4割上回る。海外は1日休めば9連休が可能な曜日配列と円高を追い風に、遠方の欧州が人気。定番の韓国や中国は不安定な外交情勢の影響で落ち込みが目立つ。
「予約はバブル崩壊後の最高水準だった1996年度に次ぐ」と手応えを示すのは、JTB東北仙台支店の石橋信司支店長。「海外は震災前の2010年度比で4割増、国内も3割増」と言う。
中でも長距離旅行は海外全体の約50%に達し、例年の約35%から大きく伸びた。うちイタリアやスペインなど欧州方面は11年度比2割増で、10年度比では5割増という。
1月4日に休めば、12月29日~1月6日の9連休となる。石橋支店長は「円高効果もあり、8日間以上の長期旅行に拍車が掛かった」とみる。
近距離では台湾、香港など東南アジアの予約が11年度の1.5倍。仙台空港発のチャーター便も、12月末のベトナム・ハノイ行きが完売。ハワイ人気も衰えていない。
一方で韓国、中国は竹島問題や尖閣諸島問題が影を落とす。「韓国は復調しつつあるが、まだ11年度の2割減。中国は7割減と今も深刻だ」(石橋支店長)。
東北発の国内は旅先が東北各県内、首都圏ともに11年度の1~2割増。近畿日本ツーリスト東北によると、域内は福島県内の回復ぶりが顕著で、首都圏は東京ディズニーリゾート人気が根強い。
平野雅伸個人旅行事業部長は「前年度は震災の影響で、夢や癒やしを求めて旅行者が増えた。本年度は価値観が変わり、物品よりも旅行にお金をかける消費者が多くなった」と分析する。
インターネットの旅行サイトでも国内旅行は堅調で、楽天トラベルによると全国の利用者は11年度より25.7%増えた。
福島県の温泉地への予約は73.0%増え、会津地方の温泉地が人気。宮城県も43.8%増と客足が回復している。同社は「休みが長く取れるため、帰省だけでなく旅行もしようという傾向が強い」としている。