東北の県庁所在地6市が、海外旅行客誘致や地場産品の輸出拡大を模索している。東日本大震災で落ち込んだ東北への外国人旅行者は戻らず、被災企業の販路回復も苦戦する。打開に向け、6市などは10月、米国4都市で初の合同観光物産展を開き、新たな「トウホク」の枠組みで魅力を発信した。(報道部・亀山貴裕)
観光物産展は10月16日に始まった。日系企業が多いカリフォルニア州南部トーランス市のショッピングセンターでは、6市や各商工会議所など東北六魂祭の構成団体が盛岡さんさ踊りなどを披露しながら、東北の夏祭りや食文化をPRした。
同行した仙台市観光交流課の小山裕行主幹は「日本への外国人旅行客は増えているが、東北は知名度不足に震災のイメージが重なって後れを取っている。6市が連携し、東北を売り込みたい」と物産展の意義を語る。
円安を背景に、訪日外国人旅行客数はことし、過去最多の1200万人を突破する見通しだ。だが、東北6県に限ると昨年は震災前の6割。回復の兆しは今も見えない。
訪日米国人の都道府県別行き先は、東北トップの宮城でも20位。訪米団がトーランス市で行ったアンケートでは仙台や福島など東北の主要都市の認知度はわずかだった。
東北観光推進機構の担当者は「欧米人は日本の自然や歴史への関心が高い傾向にある。県境を越えた受け入れ態勢を整え、露出を増やせば、伸びる余地はある」と見る。
東北の食産業の顧客獲得を狙い、各店舗には6県の食品約200品種が並んだ。秋田の「ババヘラアイス」など実演販売した商品を中心に、売れ行きは好調だった。
会社員ヴァシリキ・ニコラウさんは「東北の地名は知らないが、秋田のババヘラはビューティフルだ」と話した。
訪米団は日本貿易振興機構ロサンゼルス事務所も訪れ、吉村佐知子所長から「東北エリアでまとまったPRを続けることが、米国では効果的だ」とアドバイスを受けた。
今野薫仙台商工会議所事務局長は「米国の流通事情に詳しい人と人脈を築き、観光や物販の拡大で東北全体の復興につなげたい」と次のステップへ意欲を見せた。