宮城県南三陸町歌津の砂浜に20日、海水浴場「長須賀つながりビーチ子ども海広場」がオープンする。東日本大震災後、町内2カ所の海水浴場は閉鎖が続く。「地元の海で泳ぎたい」という子どもの思いに応えようと、ボランティア団体や住民有志が、がれきの撤去や清掃を進めてきた。
海広場は、泊漁港に接する約150メートルの砂浜に開設する。震災前は約2キロの砂浜が広がる長須賀海水浴場の東端部で、主に地元の子どもの遊び場になっていた。
砂浜復活のきっかけは、町内で活動するボランティア団体「震災復興支縁協会つながり」が昨年7月、歌津の小中学生ら23人を招待した沖縄旅行だった。
津波のショックで初めは海に近づくのを怖がる子もいたが、徐々に慣れ、みんなが海水浴を楽しんだ。旅行後は「地元の海で遊びたい」「自分は海と生きる」といった感想が相次いだという。
つながり代表の勝又三成さん(32)は「南三陸の子は海で遊んで育ってきた。津波でひどい目に遭ったが、海を捨てるわけにはいかない。子のために泳げる浜を取り戻そうと決断した」と語る。
復旧は今年3月11日に始まった。勝又さんらが協力を呼び掛け、毎週土日に町内外のボランティア50~100人が参加。浜一面を覆うがれき、流木を少しずつ片付けた。海中のがれきは沖合約80メートルまで潜水作業で除去した。砂浜は重機で深さ1メートルまで掘り起こし、手作業で細かい異物を取り除いた。
地元の小中高生約50人も「南三陸シーモンキー」というグループを結成して作業に加わった。リーダーの一人、千葉秀君(16)は「震災前と同じように泳ぎたかった。震災後はボランティアの支援をずっと受けてきたが、ようやく自分で復興に貢献できた」と喜ぶ。
海広場は8月10日まで毎日午前9時~午後3時に開設する。監視員が常駐し、仮設シャワーや売店を設置する。運営を担当するつながりによると、水質調査では最も良いランクの「AA」で、放射能は検出されなかった。