2020海苔年度の海苔共販(入札)が11月から始まった。ここ数年は“46年ぶりの大凶作”も含めて不作続きで、輸入海苔があるので正確には国産海苔が不足している状態だ。しかし、コロナで状況が一変。特に緊急事態宣言が始まると、コンビニの来店客が減少しコンビニおにぎりが売れず、海苔の納入量も大幅減。その影響が回りまわって、今年度入札で相場の下げ圧力として大きくのしかかっている。 海苔需要の内、業務用が約72%(食品新聞推計)を占め、その半分がコンビニ向け。全需要から見ると約36%となる。海苔は海産乾物としては随一の市場規模(約1800億円)を誇り、ユーザーのすそ野も広いが、コンビニチェーン(ベンダー)は大量に安定して使用してくれる最重要顧客だ。恵方巻も積極的に販売してくれるので、さまざまな協力要請になるべく笑顔で対応してきた。 その大得意先が苦戦すれば納入業者も影響を免れない。今4―7月の3大チェーンの平均来店客数は約15~20%減。徐々に回復傾向にあるが、コンビニおにぎりの販売量も同様な落ち込みを記録したと思われる。同期間のおにぎり販売個数は非公表ながら、納入海苔業者のコンビニ向け実績が客数と似たようなマイナス数値なので推して知るべしだ。 また、家庭用海苔は伸びたが、百貨店向けの贈答海苔はもっとマイナス。百貨店自体が4、5月に自主休業していたので、ECサイト以外は売上げが激減。大手贈答海苔店は4、5月で4割減ったところもある。 ただ、産業全体への影響としてはコンビニ不振の方が深刻だ。贈答向けの海苔は高価格帯に限定され、市場構成も約2~3%しかない。今年は海苔に限らず高級魚や牛肉が行き場を失って大量に余っているが、高級海苔も似たような境遇にさらされている。 結局、一転して海苔の在庫ができた格好だ。しかも企業によっては余剰と言えるレベル。ここ数年の不作推移で、仕入れた海苔は即座に加工して販売予定に間に合わせていたが一変している。また、余剰在庫の兆候はすでに今夏には出ていた。コロナの影響が多方面にわたる中で、コンビニを含めた業務用不振が露呈。そこで高値在庫の見切り販売が一部始まっていた。 それでも海苔生産は毎年、気象や海況条件で変わる。これまでは暖冬に悩まされ“46年ぶりの大凶作”まで至った。 さて、今冬はどうか。日本の明日を真剣に考えている気象庁の見解は「平年並」。共販も生産量が回復傾向にあり、12月17日時点で枚数が約70%増(6億1千100万枚・全漁連)、平均単価は約28%安の13円42銭。現在は秋芽(高価格帯)が主体であり、本格的な攻防は冷凍網(業務用、家庭用向け)が始まる1月からとなる。 業界が恐れるのは“崖崩れ”のような相場暴落だ。平均単価8円台(2012年度)の頃は作る方も利益が出ず、売る方も低価格競争で疲弊。産業の持続性が危ぶまれていた。やがて養殖業者の廃業が続き生産力が低下。凶作や大凶作で相場が高騰した。一方で、海苔の価格体系も再構築できた。それが今回のコロナで再び崩壊の危機にある。