海苔は4年続いた相場高がやっと終息し、反転攻勢の環境も整ってきた。昨年末から徐々に採算性や販売環境などが改善され、さらに今7月には林修氏のテレビ番組で海苔が取り上げられて、7月の家庭用販売は1~3割増となっている。今年は豊作だったことから海苔の品質も良く、加えて追い風も吹き始めた。難局続きの海苔業界にようやくチャンスが巡ってきた。
今年の海苔販売は前年末から続く容量改定による消費者の“買い足し”に生産が追われる中で始まり、2月からは海苔相場の先行きを見定めながら進んだ。結局、前漁期が5年目にしてようやく平均単価は前年数値を下回り、4年で約50%高になった流れはいったん止まった。それでも一昨年レベルには戻らず、日本の海苔生産力の低下が解消されたわけではないので不安感から高値張り付きも続くと思われる。
高騰相場の終息は業界だけでなく海苔ユーザーも安堵している。仮に今年も高くなったら使用枚数を減らす業界や商品は少なくなかっただろう。その意味では本当の窮地はぎりぎりで回避された格好だ。
さて、良いこともあった。原料高を受けてここ3年で値上げ、値締め、容量減などあらゆる手段を尽くして悪戦苦闘していたが、昨年末は容量改定の影響だと思われるが11月ぐらいから販売量が急伸。つまり内容量が減った分だけ素直に買い足してくれたということだ。
さらに、今7月3日に放映された「林修の今でしょ!講座3時間スペシャル」でバナナ、梅干、海苔が取り上げられ約1時間にわたって海苔の健康効果が詳しく解説された。
翌日から家庭用はまた販売が伸びて、7月単月で見ると3割増となっている商品も珍しくない。「7月は全国12部署すべて2ケタ増」(永井海苔)、「7月だけを見れば加工海苔は30%増」(浜乙女)、「7月のテレビ番組から追い風になっている」(白子)など、8月も効果が続いている企業もあり広範囲で持続的な追い風となっている。
ちなみに梅干も同様に取り上げられ、こちらは海苔を超える150%を記録するなど海苔と違ってたびたびテレビ番組で取り上げられている常連品で、業界としても事前に放送内容を含めて知っていた様子。となれば予測して多めに配荷していたが、それ以上の反響だったようだ。
海苔は不慣れなスポットライトを浴びて土日出勤までして大慌てで作っているが、うれしい悲鳴には違いない。また、タイミングも良かった。もしこれが値上げ、減量前に大当たりとなっていれば、利益が出るどころではなく売れば売るほど赤字が膨らむところだった。
もちろん未転嫁のコスト高(物流費、人件費など)はあるが、今年は海苔の品質も良く「おいしい海苔を食べてもらいたい」が何よりの業界の合言葉。その願いを実現できそうな環境が奇跡的に整いつつある。