東日本大震災で被害を受けた気仙沼市階上地区で、海藻タオヤギソウを特産品にする動きが本格化している。地区内にある宮城県気仙沼水産試験場が全国で初めて養殖技術の開発に成功し、生産体制を確立。地元養殖業者と協力しながら順調に収穫量を増やした。19日には地元住民を招いた試食会があり、新たな名産の誕生への期待を高めた。
タオヤギソウは全国各地の沿岸に分布する紅色の海藻で、水深3~5メートルに生息。カキの養殖ロープなどに付着し、冬から春にかけて成長する。食用として流通はしていないが、地元漁業関係者らの間では食べられていた。粘りがあるシャキシャキした食感が特長だ。
食用で流通できる量を確保しようと、試験場は2002年に養殖技術の開発に着手。09年に養殖方法で特許を取得した。収穫量を年々増やし、出荷を2カ月後に控えた2011年3月に東日本大震災が起きた。
試験場庁舎は津波で全壊し、再び養殖を始めることができたのは14年4月。地元養殖業者3人と協力し、今年は200キロを収穫できるまでになった。
試食会には漁業関係者や民宿、飲食店の店主ら約40人が参加した。タオヤギソウを使った酢の物やだし巻き卵、天ぷらなど5種類の料理が提供された。
津波で建物が全壊し、13年6月に再開した民宿「沖見屋」を営む畠山勝弘さん(54)は「どんな料理にも使えそうだ。震災で落ち込んだ観光客を呼び戻す目玉料理の一つにしたい」と期待する。
試験場は提供する民宿や飲食店と協力しながら知名度の向上を図り、加工品の開発も進める。雁部総明場長は「地元の人もあまり食べたことがない珍しい食材。地域全体で階上の名産品に育てたい」と話した。