2月に札幌市で開かれた「さっぽろ雪まつり」の氷彫刻コンクールで、ホテルメトロポリタン仙台(仙台市青葉区)の料理人熊坂康平さん(30)の作品が最優秀賞になった。新型コロナウイルス感染拡大による中止を経て、3年ぶり3度目の出場で初の快挙を成し遂げた。
仕事後に研さん、3度目で快挙
作品タイトルは「海龍~Wrath of the ocean(ラス・オブ・ジ・オーシャン)~」。氷像は幅約2メートル、高さ約2・7メートルで、海から飛び出した龍を躍動感たっぷりに表現している。
何度も描き直した下絵を基に、現地で約19時間かけて制作した。直方体の氷を積み重ね、ドリルやチェーンソーで削っていった。牙、うろこといった細かい部品は別に作り、つなぎ合わせた。
コンクールは若手を中心に北海道や東北から集まった10人が競った。熊坂さんは「(雪まつりが中止となった)2021年から作りたいと思っていた題材。評価してもらえてうれしい」と喜ぶ。
宮城県小牛田農林高から大阪の専門学校を経て、20歳でメトロポリタン仙台の厨房(ちゅうぼう)に入った。11年前に同じコンクールで最優秀賞を取った現・洋食料理長の鎌倉太郎さん(48)の下で働く中で、宴席に華を添え、料理のおいしさを際立たせる氷彫刻の技を身に付けた。
道具は先輩とお金を出し合って買いそろえた。コロナ禍に伴い宴会の中止が相次ぎ、規模も小さくなり氷彫刻を披露する機会が減ったため、仕事終わりに粘土模型を作るなどして研さんを積んだ。
最近は宴会の予約が徐々に戻りつつある。ホテル内外の催しで実演する機会も出てきた。熊坂さんは「氷彫刻に興味を持つ人を増やすとともに、いずれは上位の大会に出られるよう腕を磨きたい」と意気込む。