消費増税97年の悪夢再び また大打撃を受ける「5業界」

「たまごっち」が大ブームを巻き起こし、街には安室奈美恵の「CAN YOU CELEBRATE?」が流れていた。松田聖子は神田正輝と離婚。そして酒鬼薔薇事件に世間は震撼した。すべて今から17年前、97年の出来事だ。
 もうひとつ、忘れてはならないのが4月の消費増税である。税率は3%から5%に引き上げられ、庶民生活を直撃。消費者の「買い控え」で売り上げ減少に苦しむ企業が続出した。
 いま、この悪夢が繰り返されようとしている。
 高島屋の木本茂社長は8日の決算会見で、「15年2月期は営業利益ベースで200億円のマイナスの影響が出る」と話し、家電量販店の関係者も、「4月以降、売り場は閑古鳥が鳴いている」と嘆く。
「株式市場では、早くも危ない業界がささやかれ出しました。キーワードは97年4月。当時とは経営環境こそ異なりますが、消費者心理はそれほど変わりません。そのころの経済指標を見れば、危険な業界はおのずと浮かび上がります」(株式評論家の倉多慎之助氏)
■秋は大型倒産が続いた
 97年4─6月期の実質GDPは消費増税の影響でマイナス3.7%に沈んだ。4月の完全失業率は悪化し、サラリーマンは少しでも収入をアップさせようと残業を増やした(別表参照)。
 業界別に見ると、自動車販売が4─6月期に前年比9%以上減少し、家電販売額は約8%落ち込んでいる。
「統計から見えてくるのは、自動車、百貨店、スーパー、家電の各業界が大打撃を受けるということです。住宅を中心とする建設業も厳しいでしょう」(市場関係者)
 スーパー業界からは、「駆け込み需要による反動減は、想定を下回っている」と強気な声も聞かれるが、増税の悪影響を甘く見ると大変なことになりかねない。第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏が警告する。
「97年は夏から秋にかけて経済の動きに変化が見られました。増税の影響でデフレが顕著となり、企業経営は悪化。11月には三洋証券、北海道拓殖銀行が経営破綻し、山一証券は自主廃業を決めたのです」
 歴史は繰り返す――。
 肝に銘じておいたほうがよさそうだ。
【1997年4月以降の主な経済指標】
◇実質GDP/前期比▲3.7%(4-6月)
◇完全失業率/3.32%(4月)3月から0.9%悪化
◇残業時間/5.7時間(4月)3月から2.9時間増
◇全国消費者物価/前年比1.9%増
◇全国百貨店売上高/前年比▲6.3%(4-6月)
◇チェーンストア売上高/前年比▲4.8%(4-6月)
◇新車登録台数(軽除く)/前年比▲9.2%(4-6月)
◇家電販売額/前年比▲8.3%(4-6月)
◇新設住宅着工戸数/前年比▲9.5%(4-5月)
◇建築着工床面積/前年比▲1.6%(4-5月)
※省庁、日銀、業界団体などの資料を参考に作成

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