グローバル化の進展により、国の枠を超えて活躍する「グローバルエリート」が生まれている。そんな中、人気コラム「グローバルエリートは見た!」の筆者で、『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』の著者であるムーギー・キム氏が後継者を募集。“芸風が似ている”ということで後継コラムニストとして指名されたブラザー・キム氏が、香港を拠点に世界を飛び回りながら、一流エリートと二流エリートの違いをつづっていく。
「あれま~、お客さん、3月の5分の1以下ですか。えらい減り方ですね~」
「ええ、4月頭までは3月のお客さんの運送が残ってても、来月はそうとう暇なんですよ」
これは先日、久しぶりに日本に拠点を構えることにしたグローバルエリートの弟子である私が、消費税増税前に買い物をしまくったときの、運送業者さんとのやり取りである。
このたかだか3%の増税なわけだが、心理インパクトと消費者行動に与えた影響は極めて大きかった。日頃、集団心理に巻き込まれず冷静な判断をモットーに生きている私だが、3月はベッドやらテーブルやらテレビやらホームシアターセットやら、実に多くの家具を買い替えてしまった。しかし4月に入ってからは、食事代とか必要最小限の買い物以外は極力控えている。そして今後もしばらく、何も買わないことだろう。
■ブルーレイレコーダーと4Kテレビは不要?
なんでもかんでも買い替えた私だが、そんな中でも私が冷静に買わなかったのはブルーレイレコーダーである。これは、そもそもこれだけテレビ番組が面白くないうえ、Youtubeで何でも見れるのに、テレビ番組で録画する価値があるコンテンツがあるとは到底思えないからだ。笑っていいとものみならず、すべての番組を終了しなければならないほど、今のテレビ番組の質は終わっている。
あと、“高モノ買いの銭失い”を繰り返してきた私だが、4Kテレビも買わなかった。そもそもしばらく4K放送がされないのでテレビの画質は当面同じなうえ、現行のハイビジョンでも立派すぎるほどきれいであり、これはデジカメの画素数が500万画素くらいからもうそれ以上上げられても画質の差を全然感じず、1500万画素とか言われてもファイルのサイズが大きすぎて逆に大迷惑を被ったことに相通ずる、“別に上げても仕方ないスペックへの無駄投資”な気がしている。
ただし世の中的にはこれら“あまり必要なさそうなもの”も3月の駆け込み需要ラッシュで、かなり売れたという。これは裏を返せば4月の増税以降、そうとう先の需要まで先取りして消費されたということである。
■グローバルエリートの弟子が目撃した、3月駆け込み需要
実際のところ、私が3月に回った店はどこも忙しくて忙しくてたまらない、という感じであった。表参道の私が好き好んでいる無垢材の家具屋さん、カグラではソファをオーダーしたら6月くらいまで待たなければ生産が間に合わないという。大塚家具も運送業者さんが多忙なため、3月中旬に買っても到着は4月の2週目まで待たなければならないというありさまであった。
ヨドバシカメラで買ったホームシアターセットも10日経ってもまだ運送業者がいっぱいいっぱいということでまだ家に届いていないし、実は世の中の多くの会社が、運送会社がフィーを2倍に上げるなどの強気に出ることで、コスト構造の見直しを迫られている(なお余談で応援させていただくと、ベッドマットは日本ベッドというメーカーのシルキーポケットがきわめて快適なので、親愛なる読者の皆様もぜひ日本ベッドで日頃の激務を癒してほしい)。
ただしこれは多くの人が思っているように、この消費拡大は長続きしないだろう。というか、4月から6月にかけての四半期の消費の急激な落ち込みと、その数字が見え出す7月ごろの株価低迷が心配である。いや、観測値はもっと早くでるので株価の反応ももっと早いかもしれない。
■第2四半期の消費落ち込みと株価低迷
消費税が上がったときはたいてい同じようなパターンだが、駆け込み需要で一時的に消費が盛り上がり、その反動でしばらく閑古鳥が鳴く。前回消費税が上がったときはまだ日本の構造的経済縮小がそれほど注目されていなかったため、やがて消費も徐々に平準化したが、今回はわけが違う。私の予想だが、多くの消費関連の会社で当初は“消費税増税の影響はミニマム”とか言っておきながら、徐々に下方修正を余儀なくされることになるであろう。
また金融拡大と財政拡大に次ぐ、第3の矢の議論がされているだけで見通しがたたないことに、外国人投資家のみなさんも気づいている。ちなみに外国人投資家が第3の矢に失望し始めていることを、実は政府の内部の人もよくわかっていて、経済特区やオリンピック特需でなんとか成長ストーリーを描こうとしているが、今のところ説得力に乏しく、不発である。
このままでは消費が急激に落ち込み、それを先取りして株価が落ち始めると、過去1年ほど続いてきた“何かが変わりそうだ”という上向きの期待に、冷や水が浴びせられることであろう。
■重税国家なのに、低福祉国家?
そもそも社会保障の破綻を防ぐのが主要目的のひとつであったはずの消費税増税。この程度の増税ではその社会保障破綻の波をピクリとも防ぐことができないばかりか、その増税分のかなりの分が経済対策で使われることになっている。消費税は3%上げても社会保障費の確保には焼け石に水である。
経済対策に関して言えば、非効率な政府の手を通さず減税に回して小さな政府に徹してほしいところだが、重税国家で繁栄した国は歴史上なく、スウェーデンなどの北欧諸国は福祉の充実という裏付けがあるからこそ、高い税率が受け入れられていることを肝に銘じたい。
この重税(特に富裕層に対する重税)に見合った世界水準の行政サービスを提供できているかははなはだ疑問だし、メディアや国民には厳しくモニタリングしてほしいと思う次第だが、残念ながら日本は超重税国家めがけて邁進している。しかも北欧とは異なり、税金が上がる割に社会福祉の水準は低下するという重税・低福祉国家に陥ろうとしている。
■実は消費税増税後の4月のほうが、物価が安いケースも
末筆ながら、最後に明るいニュースをお届けしよう。私は3月末、テレビとかオーディオセットを“消費増税前のファイナルセール!”とかいう踊り文句に踊らされて某大手家電量販店で買いまくったのだが、昨日4月7日、店にどれだけ閑古鳥が鳴いているか、私にいろいろ売りつけた店員さんを冷かそうと思って足を延ばしたら、なんと3月末より値段をぐーーんと下げて、格安で私が買い替えたテレビを売っていたのだ。
そう、量販店も考えている。3月末には増税前で需要が上がるので値段は高く維持でき、逆に4月で消費税増税効果で需要が急減したので、値段を割り引いて需要喚起をしていたのである。
金融の世界に長らく身を置いていながら、この経済学的に常識的に起こりうることを見通せず、大量の駆け込み需要で200万円くらい使ってしまったグローバルエリートの弟子。おまけに日本のテレビ番組の質は最悪だ、とか言いながら60インチの最新テレビをしっかり買い込んだ隠れバラエティ番組ファンの私。
そんな私がわが師・グローバルエリートを超えた、理論を実践できる一流のエリートになるには、まだまだ遠い道のりがあるようである。