消費者の『エコカー』の定義に変化、「3低」がクルマ選びの基準に — マイボイスコム調べ

低燃費などの高い環境性能により、地球とお財布に優しいクルマとして人気の『エコカー』。東日本大震災後には、消費者意識の変化から、社会や環境に貢献する商品としてエコカーへのニーズが高まっていると言われているが、消費者のクルマ選びに対する本音はどのようなものだろうか。
マイボイスコムは、『エコカー』に関するアンケート調査をインターネット上で実施。20代から60代までの男女で、普通運転免許と自家用車を所有し、日常的に車を運転する人1000名からの回答を元に調査結果を公開した。
● ハイブリッドカー・電気自動車への関心高いが、「値段が高く、購入には慎重」
まず調査では、環境省・国土交通省・経済産業省によって『エコカー』と定義されているハイブリッド自動車、電気自動車、メタノール自動車、圧縮天然ガス自動車、圧縮空気車のうち、広く市販されているハイブリッド自動車と電気自動車に対する意識について聞いている。回答者のうち、「関心がある」という人は71.4%と、7割を超えた。また、震災によって「関心が増した」という人は77.1%になり、震災によって環境配慮型の商品への関心が高まっていることが伺える。
しかし、ハイブリッド自動車や電気自動車に対する意識を深堀してみると意外なホンネが見えてくる。調査では、「今持っている車からハイブリッド自動車や電気自動車に買い換えることは良いことだと思う」と考える人が76.0%と高い一方で、「ハイブリッド自動車や電気自動車に興味はあるが、値段が高すぎて手が出せない」も74.4%と高く、現実的には高価なハイブリッド自動車や電気自動車の購入には慎重な意見が多いようだ。また、「低燃費によるガソリン代の削減によって、今持っている車との購入価格差を回収できなければ、ハイブリッド自動車や電気自動車を購入したくない」と考える人も72.9%となった。
ハイブリッド自動車や電気自動車に対する消費者の考え
ハイブリッド自動車や電気自動車に対する消費者の考え
● 消費者がクルマに求める条件 — 「低価格」「低燃費」「低維持費」
回答結果によると、エコカーの環境性能に対する高い関心がある一方で、現実的には購入価格の経済的負担は非常に大きなものとしてとらえている。理想のハイブリッド自動車・電気自動車に求める条件について聞いた質問でも、重視する条件として「購入価格が安い」(62.4%)が最も高い。以下、「燃費が良い」(58.0%)「維持費が安い」(45.2%)もランニングコストを重視する意見で、理想のハイブリッド自動車・電気自動車の条件は、「低価格」「低燃費」「低維持費」の”3低”だと言えよう。
理想のハイブリッド自動車・電気自動車に求める条件
理想のハイブリッド自動車・電気自動車に求める条件
この傾向はハイブリッド自動車・電気自動車に限らず、自動車全般についても言えるようで、エコカーに限らず自動車を購入する際の重視点を聞いた質問に対しては、1位が 「購入価格」(82.7%)、2位が「燃費のよさ」(64.9%)、3位「運転のしやすさ」(53.2%)、4位「維持費」(44.6%)と、費用周りの項目が中心に挙がっている。別の質問では、「本音では、エコより低価格を重視する」という回答者が73.8%おり、環境(エコロジー)を大切に考えていても、ホンネでは経済性(エコノミー)をクルマ選びにおける最も重要な要素として捉えているようである。
自動車を購入する際の重視点
自動車を購入する際の重視点
● ハイブリッドカーや電気自動車だけでない、消費者が考える『エコカー』の定義
このような意識を反映してか、冒頭で国が定めた『エコカー』の定義に触れているが、消費者が考えるエコカーは必ずしも国の定義と一致していないことも調査から明らかになっている。
様々な自動車の種類を回答者に提示し、「エコカーと思うか」という質問をしたところでは、「ハイブリッド自動車」(96.8%)、「電気自動車」(96.1%)、「天然ガス自動車」(79.4%)など、国が定義した『エコカー』を認知しているのはもちろんだが、一方で「排出ガスの少ない車」をエコカーだと思う人が75.7%、「低燃費のガソリン車」をエコカーだと思う人が73.3%、「軽自動車」をエコカーだと思う人が56.9%と高い。従来型のガソリンエンジン車や軽自動車でも燃費や経済性に優れたクルマであればそれをエコカーとして捉えているようだ。
これらのクルマを『エコカー』だと思いますか?
これらのクルマを『エコカー』だと思いますか?
それを裏付けるものとして、「ハイブリッド自動車や電気自動車並みの低燃費を実現するガソリン車や軽自動車があったら、それらをエコカーだと思うか」という質問には、「思う」と答えた人はガソリン車で81.4%、軽自動車で80.0%と、いずれも8割を超えている。
● 新しい燃費基準「JC08モード」に挑戦するメーカー各社
このような消費者のニーズがあるなか、自動車メーカー各社の「低燃費競争」には大きな変化が生まれている。それが、燃費性能の表示基準の変更というものだ。
従来の「10・15モード」は”カタログ燃費”と呼ばれており、国土交通省が定める基準で燃費性能をシミュレートした理論値で、実際の走行燃費とは大きく差が出るケースが多かった。そこに新たな基準「JC08モード」が登場し、2011年4月には省エネ法の改正によりカタログに表示する燃費性能もこの「JC08モード」が義務付けられた。「JC08モード」はより実際の走行環境に近い状態で燃費性能を検査するもので、従来のカタログ燃費よりも10%から15%低くなるという。
「10・15モード」と「JC08モード」の計測方法の違い
「10・15モード」と「JC08モード」の計測方法の違い
これにより、「10・15モード」で1リットルあたり30キロ付近の燃費性能をセールスポイントにしていた車種は「JC08モード」への切替でその燃費性能を低く記載することになり、更なる燃費性能の向上を求められることになった。
現在、「JC08モード」で最も燃費性能が良いのはハイブリッド自動車の「トヨタ プリウス」で1リットルあたり32.6キロだが、ダイハツが9月に発売を予定している軽自動車「イース」が1リットルあたり30.0キロと軽自動車でありながら各社の「ハイブリット競争」の間に割って入り、トップのプリウスに肉薄している。以下、ホンダの「インサイト」や「フィットハイブリッド」などハイブリット自動車が燃費性能の上位を占める中、環境エンジン「SKYACITV」を搭載したマツダの新型デミオ1リットルあたり25キロと健闘している点も注目だ。
「ダイハツ イース」や「マツダ デミオ」といったハイブリッド自動車に匹敵する低燃費を実現したガソリン車や軽自動車は価格がリーズナブルな点も重要なポイントで、例えば燃費性能の上位2台を比較すると、「トヨタ プリウス」の価格が205万円~なのに対して「ダイハツ イース」が80万円。普通車と軽自動車の違いはあるが、同じ普通車を比較しても「マツダ デミオ」が140万円~とリーズナブルだ。
今後はハイブリッド自動車、電気自動車、ガソリン車、軽自動車といったクルマの種類に関係なく、消費者が選ぶ基準となる「低燃費」「低価格」「低維持費」をバランスよく実現したクルマが今後消費者の心を掴んでいくことが予想される。中でも、ハイブリッド自動車や電気自動車に肉薄する性能をもった超低燃費型ガソリンエンジン車・軽自動車は、車両費用が安くランニングコストも抑えられる「第三のエコカー」として今後消費者の注目が集まるだろう。

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