清水建設のマンションでも耐震欠陥 緩衝材が計画の1割しか入らず 仙台

大手ゼネコンの清水建設が仙台市中心部で施工したマンションに、地震の揺れから柱を守るために必要な緩衝材「構造(耐震)スリット」が1割しか入っていなかったことが10日、河北新報の取材で分かった。建物の耐震強度不足に直結する欠陥で、建築基準法に違反する公算が大きい。清水は建物全体の調査に乗り出し、修繕工事する見通し。

[構造スリット]地震の揺れで建物を損傷させないために柱と壁を構造的に切り離す2~5センチ程度の隙間(スリット)。壁が揺れる力が柱に伝わらないようにするのが目的で、緩衝材の役割を果たす発泡ポリエチレンを入れるのが一般的となっている。1995年の阪神大震災がきっかけで導入が進んだ。

建築基準法違反か

 清水建設東北支店と、管理組合の顧問建築士であるAMT1級建築士事務所(東京)などが6月6日にマンションで調査を実施。結果報告書によると、抽出した85カ所のうち、正確に設置されていたのは8カ所で、74カ所にスリットの欠損、3カ所に施工不良がそれぞれ見つかった。

 市町村などから建築確認を取る際に提出する申請図や、マンション完成後に管理組合に渡す竣工(しゅんこう)図で取り付けることになっていたスリットが入っていなかった。施工不良の場所にはスリット材に似せた詰め物が入っていた。

 マンションは完成から20年以上たち、2011年の東日本大震災や22年3月の福島県沖地震でも大きな被害が出た。管理組合が積立金などから修繕費を払っていた。

 21年秋に一部住民から異常な結露とカビの発生を訴える声が上がり、清水や管理組合がそれぞれ外壁のひび割れなどを調査していた。24年2月に管理組合が依頼した調査会社が外壁を削り落とす調査をした際、図面で指示されている場所にスリットが入っていないことが発覚し、6月の合同調査につながった。

 AMT1級建築士事務所の都甲栄充代表は「人の命に関わる建物であり、絶対に許せない重大な違反。過去の地震で建物は相当なダメージを受けている。早急に対応してほしい」と話した。

 清水建設の担当者は「スリットが入っていなかったのは事実。当時の記憶がない人が大半で、なぜそうなったかは分からない。今後、全て図面通りに直し、最善の対応をとっていきたい」と答えた。

 仙台市内では、準大手ゼネコンの前田建設工業(東京)が施工したマンションでも6月に構造スリットの施工不良が発覚している。

「信用して買ったのに」住民は怒りと困惑隠さず

 「倒壊していたら一大事だった」「許されない」。大手ゼネコン清水建設が仙台市中心部で施工したマンションに耐震上必要な設備がほとんど入っていなかったことを受け、マンション住民は、怒りと困惑の表情を浮かべた。

 「清水建設のマンションだから信用して買ったのに、マンションを造る技術がなかったのか、それとも故意だったのか、どっちにしてもがっかりした」

 住民は購入から20年以上たって発覚した重大な施工不良に失望を隠さない。

 清水建設と管理組合の顧問建築士が6月に合同で調査した結果、地震の揺れから柱を守る構造(耐震)スリットの9割近くが未施工だったと確認された。

 「東日本大震災(2011年)の被害もひどかった。経年劣化のせいかと思っていたけど、壊れやすかったのでないか」と住民は憤る。

 震災で外壁の大部分にひびが入った。大規模修繕のタイミングと重なったこともあり、震災の復旧工事と合わせて約1億円がかかり、積立金で足りない分は住民が追加負担した。22年3月の福島県沖地震でも建物の共用部に被害が発生し、補修工事に約700万円かかった。被害と施工不良の因果関係は不明だが、住民の不信感は募る。

 立地条件が良く、中古物件でも1戸当たり数千万円の値が付くこのマンションの価値は、問題の発覚で今後どのように推移するかは未知数だ。

 住民は「清水の信用に基づいて買ったマンション。これ以上信用を損ねないよう責任を持って全体調査と、完全な修繕をしてほしい」と強く求めた。

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